どうせいつかは別れるから。そうやって割り切ってきたはずの感情は君によって打ち砕かれた。世界の歴史の1ページ、一文にも記されないであろう君と俺の記憶は、俺の歴史のページを埋め尽くそうとしている。現に今も、背中から伝わる君の温もりが消えはしない記憶として刻まれつつあるのだ。俺の団服に皺を作る小さな手は柔らかな拘束を俺に施した。瞬時には反応できず硬直した俺を叱咤し、苦し紛れに声を発する。

「え〜っと?どう…したんさ?」

溜め息を吐きたくなるような言葉に我ながら脱力しかけるも、それを阻止したのは俺の団服に更に深い皺を作った君の手だった。

「ただ、こうしたいだけ、なの」

鼓膜を擽るような声でそう言った君はそのまま身体を俺に密着させた。わずかな隙間も無く。余計鮮明に感じる温かさ、柔らかさに混ざって規則正しい鼓動が俺の体内で響き渡る。荒れ狂うように刻まれる俺の鼓動も同様に君に伝わっているのならもう死んでしまいたい。完全なる不整脈だ、身も心も。

「リナリー、あんま可愛いこというと襲っちゃうさ?」

誤魔化す以外の言葉が見つからずにそんなことを言ったけど、君は何も言わずただ変わりなく身体を俺に押し付けるだけだった。おいおいちょっとまった、さすがにやばいって。自身の中での焦りが表面化しそうで、実際そのことに焦っていた。言葉を詰まらせる喉に唾を嚥下させなんとか滑り出るようにした。のに、俺より先に君が声を発したから、またあの鼓膜を擽るような声で言うから、俺の心臓は真っ白に弾けた。



あなたの思うままにわたしを


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