カツカツカツカツ。あいつは俺を苛つかせる天才に違いない。あんなモヤシや馬鹿兎にへらへら笑顔なんか向けやがって。無防備に髪なんか触らせやがって。なにが「リナリーの髪って本当に綺麗ですよね」「照れるよ、もう」だ。そう荒ぶ神田の内側を顕すかのように、長い指が机を叩く。

「なんですかあれ、ウザイ」
「おーいアレン、黒いさ」
「何してるのかしら神田」

窓側一番後ろの席で激しく机を叩く神田は異様だった。遠巻きにその様子を見ていたアレン、ラビ、リナリーの3人はそんな神田を見て思い思いに言葉を発する。

「なんだかすごくイライラしてるみたい」
「あー、原因はなんとなくわかる」
「え?なに?」
「いやー、それは」
「短気な神田のことだからきっと今日の学食の蕎麦は茹ですぎだ、とかそんなことでイライラしてるんですよ」
「あー…」
「いや、あーって納得するとこじゃないさリナリー」

大概ユウも可哀想な奴さ。ラビは万年片想いの親友(とラビは思っている)に対して心からの哀れみを投げかけた。その万年片想いの相手、今アレンと楽しそうに話しているリナリーこそあのイライラの原因なのだろう。推測癖の強いラビには容易にわかることであった。

「あーあ、可哀想なユウ」
「可哀想?神田が?」
「そ。可哀想なユウ」

どうして、なんて聞かないでさ。リナリーが聞き返すより先にラビが発した言葉に、彼女は小首を傾げた。隣では紳士顔が剥げかけのアレンが素知らぬ顔で明後日の方向を見ている。

「神田可哀想なんだって」
「まあ確かに可哀想だとは思いますけどね、でも僕だって」
「僕だって?」

途中で止まった言葉を促すリナリーにアレンは笑った。なんでもないですよ。そんなアレンの言葉を聞いて、ああここにも可哀想な奴がひとりと思ったラビは思わずアレンに向けて苦笑いを浮かべた。すると無表情になったアレンの唇が象った。ラビだって。それを認識したラビは一瞬だけ目を見開いた。ああそういえばそうだった。我ながら間抜けだなあと思いながら、ラビはまた苦笑いを浮かべたのだった。


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