いつから こんな甘い香りを漂わせるようになったんだ。
いつから こんな誘うような体になったんだ。
いつから こんな激しい感情をアイツに抱くようになったんだ。

考えても考えても、心は体は、ただお前に溺れていくだけ。


「ね、何考えてるの」
「…お前のこと」
「ふうん、感心ね」
「随分生意気じゃねえか」

俺の下で楽しそうに微笑んだのはもうガキではなくなったただの女。シーツに同化しそうな白い肌を惜し気もなく晒して、組み敷かれて、吐息が触れ合うほど近づいているのに。コイツはいつもと変わらない笑顔を俺に向けた。

「この状況、わからねえのか」
「わかるよ、ちゃんと」

神田。
確かめるような声音で、相変わらず笑ったまま名前を呼ぶ。俺の体の中心がじくり、と疼いた。むかつく。自覚済みの荒い手つきで晒された胸を掴んだ。少しばかり乱暴に。瞬間、リナリーが切なそうな顔をした。僅かな優越感。そのまま強さとポイントを微妙に変えながら刺激を与えると、鼻から抜けるような声が洩れた。

「あ…神田、ん」
「なんだよ、さっきまでの余裕はどこいった?」

からかいの意をこめて煌めく瞳を覗き込んだ。どこまでも黒く、深く、透き通った瞳の色。リナリーは頬を薄く染めて、焦がれるみたいに俺を見上げて、そのヤケに艶めいた顔のまま微笑んだ。

「余裕なんて、最初からないよ…」

唇から、ほどけた声で紡がれる。ドクンと脈打ったのは紛れもなく俺の心臓だった。

「神田が好きで、好きすぎて、幸せで、余裕なんてないの。ずっと、ずっとずっと」

瞳から流れた涙が、頬を伝ってこめ髪に滲んでいった。息が苦しい。触れている部分から、さっきとは比べものにならない熱が広がっている。言葉が出てこずに、ただ惹かれるように額に、目元に、頬に、鼻先に、口許に、唇に。自分でもわかるほど震えた唇で口付けを落としていく。リナリーはくすぐったいと笑って、俺の髪をといた。どうしようもなく優しげに。唇から首筋に口付けを落として、少し強く吸い付いた。ふるりと震えた指先に俺の指を絡めて、溢れ出る熱い吐息と共に言葉が声になる。

「リナ、」
「な、あに?神田」

俺は今、泣きたくなるくらい、お前が。

「好きだ」




2011.08.13


prev next

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -