かつかつかつかつ、という連続した音は次第に大きさを増し、それ以上やったら爪が割れるんじゃない?という程激しい打ち付けにまでなった。カウンターに凹みができちゃうわ、と困ったように笑うミラを見てルーシィは指の動きを止める。

「す、すみません」
「やーね、冗談よ。どうしたの?そんなにカリカリして」

そう言いながら差し出されたオレンジジュースに少しだけ口を付けたあと、ルーシィは小さな声でその原因を打ち明けた。

「…あれ」
「ん?……ああ」

ルーシィが視線でくいっと示した先には可愛い女の子達といるロキの姿が。ミラは苦笑いを浮かべながら曖昧に返事をしたが、ルーシィは押し黙った。

「いらいらするの?」
「…はい」
「寂しかったりもする?」
「ちょ、ちょっとだけ」
「それでもやもやもしちゃったり?」

そこまで言ってミラは楽しそうに笑う。ルーシィはと言えば「なんでわかるんですか?」とでも言いたげな表情でミラを凝視した。

「す、するかも」

真顔で答えたルーシィについに耐えきれなくなったミラはぷ、と愛らしく吹き出し盛大に笑い始めた。

「ミ、ミラさん!?」
「だ、だってルーシィってば可愛いんだもの!」
「はいいいい?!」

笑い弾けながらいきなり可愛いと言われてもただただ混乱するばかりで。そんなルーシィを見てミラはひとまず自分を落ち着かせて話始める。

「単刀直入に言うわね。それはやきもちよ」
「あい?」

思わずハッピー語になってしまったが今はそんなこと気にしている余裕などない。ミラの言葉に頭がしん、と静まり返ったがとどめの一言で瞬時に冴え始めた。

「言っちゃえば恋よ」
「ちょっと待ってえええ!」

勢いよく立ち上がり発せられたルーシィの声にそこにいた全員が視線を注いだ。その中にロキの視線もありルーシィは赤くなりながら小さくなってイスに座り直す。

「ふふ、やっぱり自覚してなかったのね」
「なんですかやっぱりって!いやてか、え?!」
「はいはい落ち着いて」

いや落ち着けませんよ!と言い返したくもなったがそこはなんとか残っていた冷静さで飲み込む。オレンジジュースを二口喉に通し気持ちを紛らわしたあと、ふうと息を吐いてミラの話に耳を傾けた。

「好きなのよ、ロキのこと」

誰が?と聞くのは野暮だとわかってしまっていたので言わない。でもそれ以外の言葉がみつからない。

「否定する気持ちがないなら、それは事実になると思うの」

ルーシィは恋かもしれないその気持ちを否定してる?
問いただすミラの声音はやさしかった。ルーシィは素直に首を横に振る。その素直さすら「ああ、恋なのかも」と自覚した。

「うん、なら、大丈夫ね」
「え?だ、大丈夫って何が…」
「それは後ろの人が教えてくれるわよ」
「…え」

にこやかに笑いながら指を指したミラにルーシィはなんとなく良くないことが起こるんじゃないかと身構えた。おそるおそる後ろを振り向いた瞬間そこでルーシィの時が止まった。

「やあルーシィ、やっと自覚してくれたみたいで」
「きゃあああああああ!」

振り向いて目の前に立っていたロキから、ルーシィは割れんばかりの悲鳴を上げながらカウンターの隅へ逃げようとした。しかし、左腕はしっかりとロキに掴まれびくともしない。

「ロキィィィ!?いつの間にっ」
「うーん、さっきの大きな声聞いたあとぐらいから」
「半分以上聞いてるじゃないー!」

涙目になりながら腕を振り払おうとするルーシィにロキは満面の笑みを向ける。暴れる右腕もしっかり捕まえてその身体を引き寄せると、きゃっと可愛い声がした。

「もー無理。お持ち帰り」
「なんでよーっ!?」
「ようやくルーシィが自分の気持ち自覚してくれたから今度は僕の気持ちを知ってもらおうと思いまして」
「はいいいい!?」

そう言いながらひょいとルーシィを持ち上げたロキはミラに意味ありげな感謝の言葉をのべた。

「ありがとうミラジェーン」
「いいえ、あんまりいじめちゃダメよ?」
「善処します」

ロキの言葉に一際楽しそうに笑ったミラは、ひらひらと手を振りながら二人を送り出す。

「もーロキってば!」
「大丈夫、やさしく教えるから」
「意味ありげぇぇ!」
「意味あるよ」

ギルドのちょうど真ん中で立ち止まったロキに、ルーシィは一瞬にして身体を強張らせた。や、てかギルドの真ん中でお姫様だっことか。

「そういえばまだだったよね」
「は、はい?」

おそるおそる聞き返すと、にっこりと不敵な笑みを浮かべた顔でロキは静かに告げた。



ずっとずっと君が好きでした。



2010.10.23

ー ー ー ー ー ー ー ー ー

ぎゃら様からのリクエスト、『女子といちゃこらしてるロキにルーシィが嫉妬して自分の気持ちを自覚してわたわたするけどでもロキは確信犯みたいなお話』でした。たぶん←

まずは何より大変、大変お待たせ致しました!え、あ、待ってない…ですよね。はい。

ルーシィ目線で書くのはこんなにも難しいのか!と今回このお話を書かせていただき痛感しました。文才がほしい…。

次回はこのような機会があればちゃんと良いものが書けるよう精進致します故、今後とも久遠をよろしくお願いします。(土下座)

久遠



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