「はい、タクトくん!」

そう言いながら彼女が差し出したのは淡いピンク色の小包。白いリボンで綺麗に飾られたそれの中身は見なくともわかる。今日は2月14日、セイントバレンタインデー。

「おお!ありがと!」
「いえいえ〜、いつもお世話になってますから」

少しだけ照れたように笑う彼女が可愛くて、今すぐ抱き締めたいけどここは教室で。というかいきなり抱きついたりなんかしたら間違いなく拒否されるというそれ以前の問題があって。恋人でもない僕に彼女がくれたものを分類するなら、確実に義理だろう。

「み、見た目はあんまり…だけど味は大丈夫!、なはず!」
「はは、自信無さすぎじゃない?」
「う〜、だって本来私は食べる側だから…作るとなると」

そう言って眉を八の字に曲げる。たどたどしく「おいしくなかったら無理しないでね?」とか上目遣いで言ってくるなんて、凶悪にも程がある。おいしくないわけない、と強めに言うと少し頬を染めたその顔も(ああもう食べちゃいたい)

「あ、ありがとう」
「それ、僕のセリフ」
「そ、うかもしれないけど、わたしからもありがとう!」
「っぷ」

力みながら言うその様がとてもワコらしくて思わず笑ってしまった。そんな僕に彼女は赤らんでいた頬を膨らませる。いつもと同じ、他愛ない彼女との時間。そんな当たり前の時間がひどく愛しくて、この小包の分類とか意味とか、しばらくは気にならない気がしてた。今はまだ。


mean
今はまだ、気にしないふり




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