※現パロ in 日本


「ルーシィ、ひめはじめしようか」
「うん、いいよ」
「え?」

しまった、思わず聞き返してしまった。思ってもみなかったルーシィの返答にロキはたらりと汗を流す。

「なによ、ロキから言ってきたんじゃない」
「え、あ、うん…」
「もう、やっぱ嫌なんでしょ」
「ま、待って待って嫌じゃないむしろすごくしたいから!」
「…そ、そう。ずいぶんやる気あるのね」

やる気って…。とらしくもなくロキは頬を染めた。目の前にいるルーシィは確かにいつもの、僕の大好きなルーシィなんだけど。なんだか今日は言葉が積極的というか。なんというか、大胆。

「じゃあ、準備してくるからちょっと待っててね」
「あ、うん…」

そう言ってルーシィは小走りで部屋を出ていった。

―ん?準備?

ピンとこない彼女の言葉にロキは疑問を抱く。しかしあれよあれよという間に良からぬ想像へと発展していった。

―じゅ、準備って…シャワーとか下着とか?ルーシィ、僕のために…

もしかしてあんなことも?こんなことも?とロキの脳内ではあられもない姿のルーシィが駆け巡っていく。誰もいないのをいいことに、ひとり楽しく妄想中のロキの顔はまさに破顔状態。

「ロキー、準備できたよ!」

そうした妄想を繰り広げて数十分。リビングの方からルーシィの声がして楽しかったひとり妄想タイムは終了を迎える。

「今行くよ!」

反射的に返事をしたロキだったがすぐに違和感を覚えた。

―あれ、部屋でするんじゃ…ないのかな

いつもことを行うのは決まってベッドの上だった。それ以外の場所は彼女が好まないからだ。

―まあ、気がわりかな

そう自分で妥当な答えを導いたロキは軽やかな足取りでリビングへと向かった。


*


「…あの、ルーシィ?」
「ん?どうしたのロキ」
「いやあの、ひめはじめは…」

現状についていけないロキとは対照的に、ルーシィは当たり前のような様子。ロキの脳内は今にもショートしそうだった。

「何言ってるの、今してるじゃない」
「いやあの、僕ら今ごはん食べてるよね確実に」

本当に不思議そうに問うルーシィにロキはだんだん焦ってきた。なぜか自分の手元には茶碗に盛られた白米がある。しかも見るからにやわそうな。その明らかにやわそうな白米をルーシィはもくもくと食べている。

「だから、これがひめはじめでしょ?」
「…はい?」

衝撃的なルーシィの言葉にロキは思わず持っていた箸を落とした。ルーシィはすかさず非難の声をあげる。

「あー!もう何してるのよ!」
「ちょっ、ちょっと待ってルーシィ!ひめはじめの意味わかってる?!」
「はあ?」

ルーシィの足元まで転がった僕の箸を拾い洗おうとするその背中に叫ぶと、ルーシィは怪訝な表情をした。そして心底呆れたように説明をする。

「年の始めにやわらかく炊いた白米を食べること」

真顔で答えたルーシィに、ロキは軽い目眩を覚えた。



あけましてひめはじめ
(もう!ボサッとしてないで食べる!)
(…はい)


さらば僕のひめはじめ


2011.01.03


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ひめはじめ、のふたつめの意味を題材にしました。やわらかく炊いた白米のことを姫飯といい、姫飯を食べることを姫始というそうです。




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