「はい、八雲くん」

差し出された箱は綺麗に包装されていて、その意図を掴めずじっと彼女を見つめてしまった。

「もう、チョコレートだよ。今日バレンタインでしょ?」

困ったように笑いながらそう説明してくれた彼女の頬は少し赤く染まっているように見えた。受け取ってくれないの?と更に眉を八の字に歪ませて彼女が言うから、らしくもなく慌ててその箱を手に取った。そんな僕の様子に彼女は目を見開いて、その後花咲くように笑った。

「うん、ありがとう」
「…それは僕のセリフだろ」
「ふふ、そっか。そうだね」

そう言いながら本当に嬉しそうに笑う君のせいで、なんだか心臓のあたりが柔らかく締め付けられたみたいな感覚になった。

「…ありがとう」

素直にそう告げてみると君はより一層華やかに笑って、だから僕は余計に苦しくなって。なのに、沸き上がるのは何故かほどけそうに甘い気持ちばかりで。


君がくれるものに、ひとつひとつ大切な名前をあげたい



2012.01.24



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