もういいよ、滅茶苦茶にしてやるから。
その言葉を理解する前に私の視界は一変した。真上から見下ろすロキはいつもの優しい先輩なんかじゃなくて、まるで知らない男の人。バイトが終了すると同時にいつも連れ込まれる待合室で、ロキは私の服を乱暴に剥ぎ取った。



「…っ、あ、ぁあ、ん」
「可愛い声、誘ってるの?」
「ち、ちがっ」

そう反論しようとした唇をロキの唇で塞がれる。正確には呑み込まれる、だ。唇同士が触れ合うというよりは舌同士が絡み合う行為を単純にキスだなんて思えない。ぼんやりと溶け出す思考の端でそんなことを考えていたら、私のなかに埋まるロキの熱が奥をつついた。飛び上がる快感に一瞬で奪われた思考は、私の淫らな矯声にのって消えていく。

「やっ!あ、ダメっ…!」
「何がダメ、なのかな。イイくせに」

冷たい、でも妖しい眼差しが私を切なくさせる。何故バイトが終わる度にロキがこんなに怒っているのか、最初は皆目検討つかなかった私だけど最近なんとなくわかるようになってきていた。

「毎回客に迫られて、その度に僕が助けてお仕置きしてるのに、まだ足りない?」
「やっ…!ちが、うっ」
「違わないでしょ。ああ、もしかしてお仕置きされるのがヨくなっちゃった?」
「、ちがう!…っあ、んん!」
「嘘、ばっかり…っ」

怖いくらいの嫉妬。いつもは冷静で余裕綽々な彼が困惑した表情をみせる唯一の感情。その感情が私をダメにする。息を吸うのと同時にギリギリまで引き抜かれたロキの熱が、直ぐ様私のなかに飛び込んできた。ごぽり、私の身体は歓迎するようにロキを呑み込む。それはロキに言われていることを認めるしかないほど熱烈に。なかで暴れ、子宮に届きそうな程奥まで。内壁を強く擦られれば訳のわからない目眩すら感じた。ロキはとても感情的に、激情的に、私のなかを掻き乱していく。

「ご、ごめ…なさっ!やぁっ、ン!」
「謝罪の言葉はもう飽きた、いいから啼きなよ」
「ロ、キィ…ッ」

吐き捨てられたロキの言葉は尖った氷のようだった。対照的に燃えるような熱が私を内から乱す。ふたりだけの空間に響くふたりだけの音に耳を塞ぎたくなる、そんな私に快楽の波は容赦無く訪れ続けた。

「…僕だけのものでいてくれない君が、悪いん、だ」

落とされたみたいに。灰になる思考の端でそんな声が聞こえた気がした。私は自分の目から溢れる涙を舐めとるロキの苦しそうな顔に気付けなかった。そんな余裕、ロキが与えてくれなかったから。ただされるがままに揺さぶられて、でももうそれでいいやと四肢の力を抜いてしまう。ぎゅ、ときつく背中を抱き締められて痛かったけど、辛かったけど、なんでだろう。なんど酷く抱かれても、絶対に目の前のこの人を嫌いにはなれない。むしろそれぐらい私を愛してくれているんだと、甘い錯覚を引き起こす。

「ロキッ…、すき…だか、らっ」
「…っ!」
「おねが、痛く、しな…で」

お願い、お願い。痛さだけであなたを感じたくないよ。もっと優しく感じたいよ。馬鹿みたいに囁きながら汗ばむロキの首に両腕を回してすがりついた。ロキは呼吸を跳ね上げて、次の瞬間には私を柔らかく抱き締めてくれた。同時にロキの熱が私の核心へと押し進む。悲鳴みたいな私の声はもうロキの名前しか呼べない。

「ロキィッ!、ロ、キ」
「ルー、シィ…っご、め」
「はぁ…んっ!やっ!あっ、あっ」

1秒、2秒、3秒。ぐん、ぐん、ぐんと私のなかを満たしていくロキの、熱。視界が涙で余計に滲んで、大好きなその顔がよく見えない。でも辛そうだということは声からわかった。私が余裕無くしてるの?そんな疑問を投げ掛ける間も与えてくれずにロキは熱烈に私のなかを満たし続ける。このまま私の世界がロキで満たされ続ければいいのに。浅はかな願いは私のなかに放たれたロキの熱と一緒に弾けていった。


傷ついてなんかいない
ただ愛されているんだ



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