※恋人設定


今日の彼女は特別甘い香りがした。それは非常に断定的なあるものの香り。その正体と目の前の彼女の赤らんだ顔を見れば、顔の筋肉が緩むのは仕方のないことだと我ながら納得する。

「ロキ、あの…ね?」

少しだけ僕から視線をはずして、落ち着きなく目を左右するその仕草がじれったい。はやく、はやく。僕のなかで暴れる僕を必死に抑えて、彼女の言葉を待つ。

「あ、甘いもの好き?」

眉を八の字に曲げて聞いてくるものだから、あまりの可愛さに一気に僕のなかで抑えられていた僕が激しく暴れだした。うまく抑えられない。

「大好きだよ」

そう言いながら引き寄せられるように伸びた手は、細い彼女の身体を抱き締めて、抱き締めて、この腕の中に閉じ込めた。驚きか恐怖か緊張か、固まったその身体の後ろに隠されていた小さな小包が目に入った。余計にきつくなる抱擁の強さとは対照的に、余計にゆるくなる顔の筋肉。腕の中でしどろもどろに声をあげる彼女に、囁きを送る。

「言ってごらん?伝えたいことをそのまま」

瞬間彼女は黙りこくったが、それからしばらくして一息つき意を決したように口を開いた。

「ハ、ハッピーバレンタインロキ!…私のチョコ、受け取ってくれる?」

控え目な口調も震える声も、熱い身体も。この際全部受けとりたい。彼女が与えてくれるチョコレートと愛を、僕はできるだけ優しく受け取りたいんだけど。

「もちろん。君ごと受け取ります」
「…えっ!?」

それは無理な願望のようだ。

I want you !
きっと君が一番甘い




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