ティースプーンと嘘(アレンとリナリー) :

「大丈夫です」

僕用に砂糖をティースプーン5杯分入れられたコーヒー。差し出した彼女は何も言わなかったのに、僕の口は勝手にそう言った。彼女は何も言わないで僕の隣に座る。そして用意されていたもう一つのコーヒーを手に取った。その時点で、僕の言葉はただの嘘になった。何を言うわけでもなく、ただそばにいるための準備をして、彼女は僕の嘘を優しく見守るんだ。すべて気付いていてくれたんだ。ただそれが嬉しくて僕は喉を震わせた。

「コーヒー冷めちゃうよ」

僕の手に触れた彼女の手は初めて会ったときから何ら変わりなくて、僕は安堵に涙がこぼれた。
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