白雪は見えなくなる(紅炎と白瑛) :

透き通るような白。
その白さが眩しくて目を細めた。
この手にすることは叶わない、永遠の白に。








冷たくなった彼女が目の前に横たわる。青白い肌に広がる乾いた紅。まるで、自分と彼女のような色。自分が願った色彩だった。

「何故」

あんなにも焦がれた白に今、触れられるのに。そこには体温はなく、雪のような冷たさが残るだけ。澄んだ顔で眠っている彼女は今にも起き出しそうで、その黒く長い睫毛を撫でた。でも、僅かにだって動きはしなかった。

後ろで音もなく立ち尽くす彼女の弟。その静寂が、この現実を一層に引き立てている。ここには紅明も紅覇も紅玉も、バルバットの小僧もあの小さなマギもいるのに。ただ1人として、音を思い出す者はいなかった。

どんなに触れても目は覚めず、温もりを移そうとしても移せず、何一つかなわない。あの凛とした声が柔らかくなって名前を呼ぶ瞬間が、ひどく心地良かった。その声も聞こえない。

「白瑛」

漏れた息のような声は、聞いたことのない男のものだった。
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