オオカミとトリガー(佐助とかすが) :

「さすがの俺様も、ちょっと限界かも」
「は?」
「ね、かすが。ちょっとだけ」

そう言って私に襲いかかってきたオオカミが一匹。悔しいことに力では敵わない。しかも私のことをよくわかっているせいか、蹴りを入れてやろうにも脚が固められ身動きできない。こうなるといよいよ危ない。

「きゃ!な、なにするんだ!」
「だって、かすががそんな格好してくれるなんて俺様嬉しくて……!」
「う、れしいのはいいけどこの大勢の意味がわからん!!」
「や、あまりに可愛くてちょっと理性が」

そういって首筋にキスをし始めたせいで変な声が出てしまい、それに気を良くした男は更に行為をエスカレートさせていく。そんな格好、というのは、不本意にも着るはめになってしまった男物の、厳密に言うと今現在私を襲っている男のTシャツだった。シャワーを浴びて用意されていた着替えを見てみるとTシャツしかなかった。だがわりと大きいTシャツはミニのワンピースと然程変わらないようで気にせず男のいるリビングへと行ってしまったのが吉日。今に至る。

「っちょ、やめ!やぁっ」
「ああ、も、すっごい興奮する」
「バ、カ!」
「かすがが着ると破壊力半端ない」

首筋から鎖骨にかけて荒い息を吐き出しながら舌で往復する。重ねて悔しいことに、男は私の弱いところを知り尽くしていた。力が抜けて変な声が余計に出る。意思に反して涙が溢れる。首から唇を離して私に向かい合う男の顔は、普段の陽気で軽い雰囲気とは全く別の、熱っぽい欲情したものだった。掠れた声で名前を呼ばれるとどうしようもない気持ちになる。唇に吸い付かれてあっという間に舌まで絡め取られると、思考力まで奪われた。

「ほんと、余裕ないよね俺」
「はぁ、っん、まったくだ!」
「かわいすぎる彼女をもつと大変だわ」
「う、るさい」
「……ほんとかわいいね」

余裕のなさそうな顔がふにゃりとほどける。このどうしようもない男に捕まってしまった私も大概どうしようもない。だから、その言葉のひとつひとつも、それを発する声も、口付ける唇も抱きしめる腕も、結局のところ心地よくて仕方ないのだ。

「俺ね、俺がキスするとふにゃふにゃに蕩けちゃうかすががすっごい好きなんだよね」
「あ、う」
「好きって言葉で言われるより、全身で俺に好きって伝えてる感じが」

「っ、ほんと、好きだよ」
「ぅあっ!!」


その言葉を最後に、オオカミは理性を手放して、私は考えることを止めた。ただただ、与えられる快楽を享受して、どうしようもなく湧き上がる熱情を掻き抱いて。
この焼き切れてしまいそうな感情の引き金を、私はずっと握られたまま。


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