あなたを抱きしめる(音也と春歌) :

あったかい人。
あなたを表すには、まずそのひとことが思い浮かぶ。いつも明るくて、優しくて、その大きなてで私の手を握っては、ほどけた笑顔をみせてくれる。その瞬間私は思う。このまま時間が止まってしまえばいいのにと。泣きたいくらいの幸せをあなたは私にくれる。口下手な私があなたに差し出せる言葉は少なくて、でも、あなたのことが本当に本当に好きで。この想いが、体ごとあなたに伝わればいいのにって、本気で思ってる。

「春歌?」

言葉にできない想いだって、抱きしめたぬくもりから伝播していくわけじゃないけれど。それでも私は、いつも抱きしめるばかりで、抱きしめられることに慣れていないあなたを、とろとろに溶けてしまうほど、優しく優しく甘やかしたい。そう思ってあなたの頭を私の胸に閉じ込めた。あなたは戸惑ったような声をあげて手の置き所に迷っているようだった。

「私、私だけが、音也くんを甘やかしてあげたいんです」

精一杯の言葉は情けないほどに震えていて小さくて、それでもあなたの肩がピクリと揺れたのを見て、私はまた強く抱きしめた。あなたの大きな手が私に巻きつく。いつものそっと触れるような、壊れものを扱うような優しいものじゃなくて、幼子が母に抱きつくような、しがみつくようなきついものだった。私にはそらが嬉しかった。

「春歌、春歌」
「はい」
「……ありがとう、愛してる」

あなたの唇が、当然のように私の名前を呼ぶのが好きだった。それから、必ず愛に感謝するあなたが好きだった。あなたの髪がふわふわた私の首筋をくすぐる。この愛しい柔らかさを私はずっと守りたいと思った。

「大好きです、私もあなたを、愛してます」

今のふたりに、本当は言葉なんて必要ないのかもしれないけれど。それでも私たちはいつだって愛を語り合う。言葉から、ぬくもりから。
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