そっと捕まえていて(デビトとフェリチータ)
降り注ぐ陽光の中で笑う、そんな彼女があまりに綺麗だったから。
「バンビーナ、」
「ん?なあに?」
名前を呼べば差し出される手。やわらかい笑顔。自分には不似合いな穏やかさが漂っていてむずかゆい。なのに、高鳴りを止めない心臓が彼女の存在に歓喜して、やっぱり不似合いなようすで動いている。触れた指先のあたたかさをすでに知っている。なんてないこんな些細なことに、喜びを感じてしまう自分。
「あーあ、とうとう俺はイカれちまったみてェだなァ」
「え?」
「……なあ、バンビーナ」
触れた頬の白さも、それがこれから赤くなることも、戸惑いがちな声が俺の名を呼ぶことも、すべてわかってしまう。それがたまらなく愛しい。
「キスしてくれ」
そして現実になっていくその様がまたいじらしくて、熱くなる。ゆっくりと触れる唇に溶けてしまいたくて、溺れていたくて、離したくはなくて。強く抱き締めた腕のなかで何度も何度も君の名を呼んだ。どうしようもなく好きなその名を。