怖がるよりも先に、(スガタとワコ) :

声が届くのに、触れられるのに、あなたといる私はいつも寂しがり屋だった。それでも、付かず離れずのこの距離に安堵している私がいた。

「ん、」

あの日、私の目の前に広がったあなたの綺麗な顔を、忘れようとしても忘れられなくて。唇が感触も温かさも、悔しいほどに覚えている。そして、少し泣きそうに歪んだあなたの顔を、愛しいほどに覚えている。頬を掠めた長い指に涙がこぼれてしまったのは、きっと、初めて触れ合えた気がしたからだ。あなたの指は酷く冷たかったけど、あなたと同様に臆病で優しかった。

「きっと私、ずっとこうしたかったの」

重ねた手が躊躇いがちに私を引き寄せて、守るみたいに抱き締めた。私はただ、嬉しかった。
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