夏 | ナノ





あついあついあつい。
蝕むような暑さに身体が侵されていく。密度の高い空気に押しつぶされて空気と自分の境が曖昧になる。
覆いかぶさる自分より一回り小さい身体を引き寄せたのは酔狂でもなんでもない。ただ日差しが眩しかったのだ。太陽を隠して逆光になった臨也の背が日光で焼かれていることを思うと気味がよかった。静雄自身の背も屋上の床で焼けているなんてことはこの際気にならない。
日射病で死んじまえばいいと思う。熱中症で揃って死ぬならそれも悪くない。ああいい加減気が狂ってるなと思うが、それすら小気味いいと感じてしまったのだから全く救いようがない。
張り付いたシャツの合間を、縫うように這う手が気持ち悪い。人肌すら融け合いそうだと思った途端に敏感なところを触るので、結局どこにも逃げ場がなかった。
終わったらアイスを奢らせよう、そう思う思考すらどっか隅のほうへ溶けて流れていく。何もかも混ざりきって一つになってしまえばいいのに。ああこんなこと、まともだったら一瞬だって認めたくはない。夏のせいにしてしまえばそれまでだ。