マナー




「おい、ここ電車ん中だぞ。電話切れ」

「はぁ?……………」

「……な、なんだよ」

「あんた何中?」

「Σな、俺は高校生だっ!」

確かに背は低い。それに、自分で言うのも辛いんだが童顔だ。
それは認めよう。

だがしかし!俺は今、学校からの帰宅途中なわけ。そう、制服なの!しかもブレザー!高校名もわかりやすいだろうにさ。

……そんなに幼いオーラ出てるのか


「ふーん。すみませんでした」

「お、おう。分かりゃあいいんだ」

なんだ、見た目によらず素直な子だな
不良風味だったからちょっぴりビビってたのは秘密だ。

「ねえ、もう車内通話はしないからさ、お兄さんメアド教えてよ」

「はぁ?なんでだよ」

「お兄さんの髪、綺麗だね。自毛?」

あ、話題変えやがった

確かに、生まれつき色素は薄い方だが
それがどうした。てか何いきなり。

てか、その
「ちっ、近いって」

「そう?」

ああ、近いとも。
完全に見下ろされてるさ。クソ。
最近の中坊は発育が良すぎるんだよ。

「で、メアド」

ケータイ貸して?
なんてそんな人懐っこい笑顔で言われても

「貸さない。てかアドレスも交換しない」

「は、なんで?」

「いや、フツーに考えて俺ら初対面じゃん」

「それが?お兄さんは初対面の人とはアド交換しない人なわけ?」

「そ、それは時と場合によるけど」

何素直に答えてるんだ俺。ここは適当に流して断るべきだろ。俺のバカ。

「俺はダメなわけ?」

な、そんな顔するなよ。
なんと言うか、しゅんとするカンジ?
そう、まさに大型犬がシュンとしてる。

「いや、だって、なんでアドレス?」

「だ、か、ら、一目惚れ!俺、お兄さんに一目惚れしたの!それぐらい察してよ」

「へー……、って、はぁ?!」

察っせねえよ!
考えてみろ、俺は男だ。いくら童顔であろうと女顔ではない。どっからどう見ても男なわけで。
それにコイツも男だ。羨むぐらいガタイの良い男だ。

フツーはここから色恋は生まれねえ。
俺の中の一般常識では有り得ない展開だ。


「ケータイ借りるね」

そう言ってヤツは、俺のポケットから勝手に携帯を取り出してメアドを交換しやがった。なにこいつこわい。


「じゃあね、関口拓也さん」

そう言って満面の笑みで電車を降りて行くアイツに、俺はいまだ状況を掴めず何とも情けない返事をかえす。

「お、おう…」

なんだアイツ、新手の嫌がらせか。
いまどきの中坊のノリはわからん。
変なヤツに目を付けられたかもしれねぇ。けど、まぁ害はなさそうだ。と、俺の勘も言ってるし、何より、俺は愛犬家だ。




END

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