神様が死んだ




姉が死んだ




2コ上の俺のネーチャン
俺の超親友翔太の彼女

カーチャンのいない俺ん家のカーチャン役
オヤジの宝物の片割れ

バイト先の先輩だって姉ちゃんのこと可愛いって言ってたし、あれは絶対惚れてると思う。

俺だって姉ちゃんが大好きだ。
男を愛しちゃてる、自分の彼氏を愛しちゃてた弟すらも愛しちゃえるズゲェ懐の深い姉ちゃんが大好きだ。

姉ちゃんが保母さんになった日
沢山の人がお祝いしてくれた

商店街のおっちゃんに
コロッケ屋のおばちゃん

コロッケ屋のおばちゃんはコロッケおまけしてくれた。

他にもいっぱい、いっぱい。




ほら、今
そのいっぱいの人が皆悲しんでる。

姉ちゃんの顔を見るとみんな笑顔になって
ニコニコしてて、それを見てる俺も笑ってて、姉ちゃんの周りはいつも暖かかった。

でも今は
みんな顔を悲痛に歪ませてる

オヤジの厳格な目元も垂れ下がり
50間近にしてはキリッとした顔も不細工に歪んでる。



なあ神様、あんまりだろ。

俺はキリストの誕生日を祝った一週間後には初詣に行くような、信仰心のカケラもねぇ若者だけどさ、これはあんまりだ。

なあ神様、
もしアンタがこの世に存在してるんならアンタは、すんげーバカだ。


だって、姉ちゃんが死んでもいい事なんてなんもないじゃん。得する人間なんて誰もいねぇじゃん。


なぁ、よく見ろよ、なあ。


「……翔太」

「…っなんでだよ。……くそっ…」


昨日まで緩みまくりのゆるゆるだったコイツの頬も、今は涙で赤く引き攣ってる。

どうしようもないマダオな俺を見捨てなかった、大切な大切な俺の幼なじみ。

俺が出来ないことを
あんたは平気でやってのけた
俺じゃ駄目なんだよ、アンタじゃなきゃ
コイツが1番イケメンなのはアンタの前だけなんだよ。



コイツが大好きで大好きで堪らなかった高校時代、
今もさほど変わらず、それ以上に愛おしい

つまり、翔太の幸せは俺の幸せに直結してるわけで

大好きな姉ちゃんと大好きな翔太の幸せ
それは俺の最大級の幸せで
それを根こそぎ奪われた俺の顔も蒼白だ


なあ、見てるか神様。


確かに世界にはもっと悲惨な日常を送る人間がいるんだろうけど、生憎俺がリアルに感じれる世界はそんなにも広くねーの。
目の前に広がってる、この光景こそ俺の世界の全てなんだよ。

俺の世界で1番の惨劇が目の前に広がってるんだよ。




なあ、神様。
あんたが25年かけて創ってきた世界が、今日で終わっちまったよ。





神様がいなくなった世界は終焉を迎えた


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