風丸とヒロト♀


いつも少し季節を先取りする彼女は、6月にも関わらず真っ白なふわふわのワンピースを着ていた。


「待った?」
少し急ぎ足でヒロトは、片手で髪を押さえながら俺の方に走ってきた。風に揺られてたなびくワンピースの裾がひらひらと軽く涼しげだ。しかし生憎太陽は照ってはなく、チラチラと雲の間から太陽が見える程度だ。

「いや、全然。」
よかった、とヒロトは花が綻ぶように微笑んだ。俺はそんなヒロトの頭をそっと撫でて、どこに行くかも決めていなかったけれどその場から歩き始めた。

「涼しそうだな、ワンピース。」
そう言えば嬉しそうに頬を染めて「梅雨があけたらすごい暑くなったから、ワンピースで来ちゃったんだ。」と、少し照れ臭そうに笑い、でも今日は曇りだから浮いちゃうな〜と残念そうに呟いた。
確かに浮いていないと言えば嘘になるかもしれない。実際俺だって真夏の服じゃないし。でもなぜかヒロトが着ているとナチュラルに見える。
「いや、似合ってるよ。」
素直に本心を伝えれば、ぱぁっと表情が明るくなった。
「本当?良かった〜。」
そうまた微笑めばふわりふわりとスカートが揺れ、暑い日差しが雲の間から溢れてきた。
「あ。」
「晴れたな。」
ジリジリと肌に照りつく日差しは真夏といっても良いほどだ。立っているだけでもじわりと汗が出るのがわかる。うふふ、とヒロトが隣で笑う。どうしたんだ?と尋ねれば、嬉しそうに「私、実は夏を呼ぶ妖精だったりして」とクルッとその場でターンして白いワンピースを風に揺らせた。同時に俺の髪も、ふわりふわりと風になった。

夏、だな。


真っ白ワンピース



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