南雲と涼野


「で、二人は何でケンカしてるの?」
「晴矢が悪いんだ。」
「ふざけんな風介がわりーんだよ。」
「はぁ?誰のせいで私の気分が悪いと思っているんだ。」
「そっくりそのまま返してやるよ、この厨二病が。」
「な…っに。頭上花畑め!」
「ちげーよこれは天パつってんだろ!」
「嘘、それ天パだったんだ。…じゃなくてー!」
静かにしようか。ここは図書室だよ。と机を勢いよく叩く。ピタリと二人の口喧嘩がおさまったと同時に周りの人達が一斉に俺たちの方を向いた。風介が一つため息をついてその場から立ち上がる。
「晴矢のいる所じゃ勉強できない。わたしは別の場所でする。」
風介はわざとらしくフンと鼻を鳴らして、ノートやら文房具やらを脇に抱えて図書室から出ていった。
しーんと静まる図書室。未だに周りからの視線が痛い。ちらりと目の前の晴矢を見れば、なんだか罰が悪そうな表情をしていた。そんな顔するくらいなら謝れば良かったのに。毎回二人のケンカを見る度に思う。
俺は出来るだけいつも通りに、さっきの出来事には触れないように、息を小さく吐き出してからシャーペンをノートに走らせた。


カリカリカリ、シュッシュッシュ。
無機質な音が規則的に流れる。俺はただひたすらに課題を進めているんだけど、晴矢はずっとシャーペンをクルクル回したりして一向に進んでいない。終いには爪を机にカツカツ当て始めたから、相当落ち着いてないみたいだ。まぁ、もちろん原因はさっきの事だろうけど。
パタンと俺はノートを閉じる。それに気がついてやっと意識が俺の方に向いたらしく、終わったのか?なんて聞いてきた。
「まぁね。晴矢が風介の事を考えてる間ずっと進めてたし。」
そう言えば顔を真っ赤にさせて、え…とかあ…とか言葉にならない単語ばかり言った後、少しだけ俺の目を見た。最後の一押しが欲しいってことかな。
「行きなよ。俺はまだ課題しとくから。」
ニコリと微笑めば、晴矢はこくりと小さく頷き、ものすごい勢いで図書室から飛び出して言った。

「ふむ。」
毎度毎度手のかかる子達だなぁ。だけど手助けしてる自分が居るから仕方ない。そう思いながら大きくのびをして、再び課題に手をつけた。

ケンカするほど、なんとやら
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テーマ「人外ファンタジー」
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