霧野と神童


いつも俺を支えてくれた霧野。
いつも俺を励ましてくれた霧野。
いつも俺を思いやってくれた霧野
いつも俺の側にいてくれた霧野。

「俺は霧野のことが好きかもしれない。」
二人っきりになった部室で、俺は霧野にそう言った。男同士だとか全く考えていなくて、ただただ自分の気持ちを伝えた。
どんな顔をするか、まったく想像できなかった。驚くかもしれない、冗談として捉えるかもしれない、それか軽蔑するような目で俺を見るかもしれない。一番望んでいるのは、俺もだよ、これからもよろしくな、なんていうのがいい。夢見がちだな。
けれど実際は俺の予想していたようなものではなくて、なんというか初めて見る霧野の表情だった。

「か。」
「…霧野?」
「神童、お前も俺のことをそういう風に見ていたんだな。」
「え?」
「神童だけは違うと信じていたのに。」
「なんのことだ霧」
「お前も俺のことを女だと思って見ていたんだろう!?」
霧野がこんなに荒々しく叫んでいるのを見たのは、初めてかもしれない。いや、初めてじゃない。幼い時に、一度だけ、クラスメイトが女だと霧野をからかったとき、信じられないほどの形相で友達に手をあげた事があった。いつもの綺麗な霧野からは想像もできない、恐ろしいものであった。
それからは"女みたい"という一言を絶対に言ってはいけないと、子供ながらに理解した。

その時のようだ。俺はふと思いだし、霧野に謝ろうと思った。そんな風に思っていたわけじゃない。霧野を女みたいだから好きになったわけじゃない。それだけは、確か。そう、その通りなはずなのに。
悲しそうな目で俺を見る霧野に、なにも言えなかった。
この気持ち悪い胸のむかつきは、(どこかでそう見ていたんだろうな。やっぱり俺も。)

赤くも青くもならない顔/byフライパンと包丁


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