吹雪とヒロト


うわぁ、目の前のカップルラブラブだなぁ。そんな密着しなくても相手は離れないのに。冬だからってイチャイチャしちゃって。あぁ、こういう人達は冬じゃなくっても年中イチャイチャしてるのか。

そんな風に周りを見ていたのは僕だけで、目の前で頼んだばかりのカフェモカをフーフー冷ましているヒロトくんは「これなかなか冷めないね」と全く気にしていない様子だ。
いわゆる僕とヒロトくんは"デート中"なわけだけど、他から見れば男二人で虚しくカフェといったところ。(実際ヒロトくんはあまり意識してないみたいだし。)
ちょっと切なくなってアイスココアをずずっと吸う。ココアの甘みが口いっぱいに広がる。この甘いのがヒロトくんにも伝わればいいのにな。そう思いながらストローから口を離す。その時になにか視線を感じて、顔をあげてみればヒロトくんが僕を見つめていた。どうしたの?と聞き返せば、その…と口ごもりながら「ココア、ちょっと欲しいな。」なんて。
「へ?」
「あ、いや、ちょっとココアも飲みたくなって。その、無理にとは言わないけれど」
「そんなことないよ。はい、どうぞ。」
そっと僕のココアをヒロトくんの前に差し出す。と、同時にさっきまで冷ましていたカフェモカを僕の手元に引き寄せた。ちょっぴり熱いカフェモカを口にふくむ。優しい甘さと大人な苦さが僕を包む。ふぅ、と一息ついて美味しいね、と微笑めば「そうだね」と幸せそうに目を細めながらヒロトくんは頷いた。

ああやっぱり前言撤回。
他のカップルみたいにイチャイチャできなくても、目の前で好きな人の嬉しそうな顔が見れるんだもんね。がっついてた自分が恥ずかしいや。

僕は今のデートがすごい楽しいよ!

なんかいいよね、こういうの。
そう言えばヒロトくんはきょとんとした顔で何が?と聞き返してきたけど、ふふ、なんでもないよ。


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