一年's


剣城くんが、コーヒーを飲んでいた。
「剣城コーヒー飲めるの!?」
「かっこいい〜!!」
「大人っぽいね〜!」
天馬くんと信助くんと輝くん達が興味津々に、剣城くんが持っているカップのコーヒーを見つめていた。
剣城くんのお兄さんのお見舞いに来た俺たちは、見舞い後に飲み物を買おうと自動販売機までやって来た。天馬くんはすぐにメロンソーダーを買い、信助くんはコーラを選んだ。輝くんは悩みに悩んで紅茶を選び、俺が何にしようか考えている横で剣城くんは慣れた手つきでコーヒーを押した。

「ねぇねぇ、苦くない?」
「慣れたから別に。」
「それってお砂糖あるの?」
「微糖だから少し。」
「おっとな〜!!!!」
天馬くんと信助くんが口を揃えてそう言った。
コーヒーなんて飲んだ事がない俺は、"コーヒー"という単語自体未知の世界で、まさか、同い年の、友達が、飲むものだなんて考えもしなかった。
そんな驚きに思考を停止させられている中、天馬くんが「マサキは飲める?」と聞いてきた。ハッ、と意識が戻る。みんなの視線はいつの間にか剣城くんから俺に変わっていて、天馬くんは子犬のように目を輝かせて俺の紡ぐ言葉を待っていた。
そんな、そんな…!
「飲めるに決まってンだろ!」
言うのが早いか動くのが早いか、とりあえず俺はその場の成り行きで剣城くんの手の中にあったカップを奪い取って、中身を一気に飲み干した。
口の中はなんとも言えない苦味と風味でいっぱいになった。飲み込もうと努力するけれど、なぜかうまく飲み込めなくて吐き出しそうになった。あまりの苦さに顔をしかめるけれど、できるだけバレ無いよう努力した(多分隠せれてないけど)。
「…かりや?」
「すごーい!!」
三人がきゃいきゃいと楽しそうにそう言うなか、剣城くんは心配そうに訊ねてきたけど俺には対応出来るだけの気力はない。
「〜〜!!」
言葉にならない声を漏らして、俺は勢いよくその場からた。

コーヒー

涙目で戻ってきた俺に、みんなが無理すんなって言ったけれど、別に無理してない、し。今日家に帰ったらもう一度飲んでみよう。コーヒー飲めるとか、かっこいいもんな。


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