南沢と倉間


「メリークリスマス。」
待ち合わせ時間ぴったりに来た倉間に、決まり文句のそのセリフを言ってから、俺は手のひらを差し出した。
きょとん、なんて効果音がでそうなくらい、は?と倉間は固まる。
けれど俺はさっきと同じポーズのまま。理解できない倉間を鼻で笑い、まじでわかんねーの?とばかにした。
「なんすか。その手は。」
眉間に皺を寄せながら首をかしげる倉間。こいつ、まじで分かってねーな。
今日はなんの日だ。12月25日だろう?誰がどう考えたってクリスマスだ。クリスマスと言えばプレゼントに決まってんだろ。この手はプレゼントを期待している手なのだけれど、分かってねえな。
「ほら。」
引くに引きにくくなった手を、ぐいぐいとつきだす。いい加減察せよ。外の外気に冷えた手は赤く冷たくなってきた。
等の本人は顎に手を添えたまま、唸り考えている。さみい。このまま行き場の無い手を倉間の顔面にでもぶつけてやろうか。そう思っていたとき、倉間がはっと目を輝かせて「分かりました」と声をあげた。

「はい。」
そっと俺の手を包んだのは、倉間の手のひら。今度は俺がきょとんと思考停止する。え、あ、へ?はい?
なにこの手?じっと繋がれた手を見つめていたら、倉間がにかっと「寒いなら寒いって言ってくださいよ。」と照れ臭そうに笑った。
ぬくいぬくい。
そうじゃないんだけど、まあ。いいか。
そのまま倉間の手を俺のコートのポケットに入れ、今日1日はこのままにしようと1人で考えていた。


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