狩屋と霧野


霧野先輩が携帯にストラップを付けていた。
赤と黒のその携帯は、メールするだけだからと言って最新式という訳ではなくて、何個か古い機種の物だった。前に見たときは何も付いていなくてシンプルな形を保っていたのに、ポケットから取り出した霧野先輩の携帯には青いもじゃもじゃした謎の生物が付いているではないか。
丸い青いもじゃもじゃは、大きな目をしているのに目付きが悪い。つり目加減がなんというか、可愛らしいというか、属にいうキモかわいい系だ。

霧野先輩のイメージとは大いにかけ離れているそれに驚きを隠せない俺は、怪訝にどうしたんですかそれ、と静かに聞いた。
「買った。」
「…へぇ。」
そんな変な物をよく買いましたね、とかなんとでも言えたのだけど、そんな減らず口より込み上げてきたのは笑いだった。
ぷっ、と一度吹き出せば最後。どっと流れてくる波のように笑いで腹が痛い。
何でそんなに笑うんだよ、と不思議そうに眉にしわを寄せる霧野先輩。いやいや、だって、先輩が、こんな、ひっひっひ。
ふう、と息を落ち着かせて笑いすぎて出た涙を指でひとすくいした時、霧野先輩はキーホルダーをつんと突っついてこう言った。
「お前に似てるから買ったんだけど。」

私が沸騰する三秒前

バカ霧野!
そう大きな声で叫びながら、俺は部室を飛び出した。真っ赤になった顔がもどかしい。
そんななか、後ろで霧野が仕方なさそうに笑っていることを俺は知らない。


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