霧野と狩野


部活が終わり、幼馴染みが一緒に帰らないかと肩をとんと叩いた。いつもなら一緒に帰るところだけど、俺は首を左右に振り今日はちょっと呼ばれてるんだとやんわり断った。彼は残念そうに眉を下げて、そうかと答えた。ちょっとだけ心に罪悪感が残るなか、じゃあと片手をあげて俺は校門に走っていった。


校門の柱に背を預け、一人携帯を触るその影は思った通りの人物だった。
「やっぱ居た。」
「なにがですか。」
「狩屋が。」
狩屋はちらりと俺の表情を確認してから、すぐ目を反らして携帯をポケットにしまった。小さなため息をついて、狩屋は一言「暇なんですか?」と訊ねてきた。
「暇な事は無いけど。」
「じゃあなんで。」
「じゃあなんで。」
狩屋は待ってんだよ。逆に聞き返せば、嫌な所を突かれて動けない蛇のような、そんな睨みを効かせて言葉を紡ごうと口を開いた。しかし狩屋は口を開いただけで何も言わず、一緒に帰ってくれますか?とだけ聞いた。


「怖い夢を見たって話してたろ?」
暗い夜道を二人並んで歩く。電灯の光といつもより明るく感じる月が俺たちを照らす。
「他人の会話を盗み聞きですか?」
「聞こえてきたから聞いてただけだ。」
「…それで?」
続きを催促する狩屋に、怖がりな狩屋は一人で帰れないかと思ってな。と言おうとしたけれど、それはさすがに男子として可哀想かと思い(男のプライドってものがあるだろう)、ぐっと喉の奥に飲み込んで、やっぱ何でもないと誤魔化した。まぁその言葉を言わなくても、狩屋はなんとなく俺が言いたかった事を理解したようで悔しそうにちぇっと口を尖らせた。
「先輩の弱点って無いんですか?」
「無いな。」
「嘘っぽ。」
はは、と軽く笑う。
そうだな、嘘だよ。弱点なんて溢れるほどある。けど。
「絶対俺は、狩屋が怖いものは怖くないし嫌なものは嫌じゃない。」
「は?」
意味が分からないと頭に疑問符を浮かべて俺の顔を見る。けど俺は表情一つ変えずに、狩屋を見る。不服そうに視線を反らして、足元にあった小石を勢いよく蹴った。
狩屋が恐れるなら俺が守りたい。足りないところを補いたい。そういう気持ちが狩屋に対しては起こるんだ。この気持ちが何なのか、いまだによく分からないけれど。

ツインテールヒーロー

さて。この気持ちはなんだと考え、これは母性本能かと一瞬思い、俺は盛大に吹き出した。


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