南沢と倉間


南沢さんの家にお呼ばれして、ダラダラごろごろと個々の時間を過ごしていた。南沢さんはベッドの上で優雅に本を読んでいて(南沢さんがすると何でも格好良く見えるのは羨ましい)、本を読む事には気が進まなかった俺はそこらへんにあった雑誌をパラパラめくりながらベッドの横にもたれ掛かっていた。

雑誌にも飽きてきたところで、南沢さんに俺もう飽きたと不満をぶつければしらねーよと冷たい返事が帰ってきた。

つまらないので南沢さんをずっと見ていたら、わざとか自然か分からないけれど色気をムンムン漂わせながら、唇を嘗めたり髪を掻きあげたりいやらしく伸びをしたり、それからそれからエトセトラ。挙げ句の果てには、信じられないくらい甘い声でくらまぁと呼んできたのだから、俺の理性が途切れるのは早かった。

「南沢さん、なんすか。誘ってるんですか?」
「は、意味わかんねー。」
「別に俺は倉間にお茶取ってほしかったから呼んだだけだし。」
「舌なめずりしたのは?」
「唇が乾燥した。」
「髪を掻きあげたのは?」
「本を読むのに髪が邪魔だった。」
なにか問題でも?というように不敵な笑みを浮かべそう言った。その笑顔ですら俺を煽るのであるからどうしようもない。
「ま、南沢さんが悪いんですからね。」
転んでいた南沢さんを押し倒し、軽く唇に触れる。ふに、と柔らかいその唇は乾燥などしていない訳で。すると南沢さんの舌がぬるりと割れ目から入ってきた。舌は俺のと絡め絡まり、どちらの唾液か分からない液体が口の周りを汚した。

キスをしながら呼吸をするのが苦手な俺はすぐに苦しくなって、南沢さんの胸をトントンと叩く。するとぐるりと体勢が変わり、俺がベッドに寝転ぶ形になった。口が離れ何秒か見つめ合う。俺はその間に息を目一杯吸って口の回りと服の袖で拭いた。

目の前の南沢さんをもう一度見れば、ニヤリと意地の悪そうな笑顔を浮かべる。あ、駄目じゃん。今日こそ俺が上になろうと思ったのに、これじゃいつもと同じじゃねーの。不満を抱いて起き上がろうとしたら、上から両手を押さえつけられた。あ〜、これを狙ってたんだろうなこの人は。まんまと誘いに乗った自分が恥ずかしくなる。
「お前は下でいいから。」
そう言った南沢さんの表情はそれはそれは楽しそうな笑顔だった。





君は糸に絡まって



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2011/10/11に間に合わなかった倉南倉


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