狩屋と霧野


「ねぇねぇ先輩」
先輩ってホモですか?
苦手な後輩が嫌な笑顔で俺にそう訪ねてきた。意味の分からない質問に顔をしかめれば、なぜかこの薄気味悪い後輩は嬉しそうに眉を下げた。
途端、俺の中で危険を感じとりビリリと警笛がなった気がした。後ずさりをすればタイミングの悪い事で、後ろには下がれず壁にぶつかった。なんでこんな隅に寄せられたんだ。実はあいつがいきなり話しかけてきたのは、これが狙いだったのか?影で先輩を脅すつもりか?色んな思考が脳内をめぐり、混乱する。しかし顔には出さないよう、ひたすら冷静さを保つ。
「どけろ。」
俺より少し小さい憎たらしい顔を睨むように静かに命令した。まぁ、聞くとはこれっぽっちも思ってはいなかったけど。案の定、退けるような仕草はせず、お得意の笑顔をした。
「ねぇ、先輩。」
ねっとりとした声で呼ばれ、悪寒が走る。と同時にこいつは俺の二つにしばっている髪を触り始めた。神童から綺麗だな、と触れられる事はあった。だから別にふれられるのは嫌いじゃなかったのだけど、こいつに触られるのは吐き気がするほど気持ちが悪い。多分今口を開いたら嘔吐してしまいそうだ。それくらい気持ち悪い。

「ねぇ、先輩。」
再びそう呼ばれた時には、とても笑顔で、とても楽しそうに、とても悲しそうな狩屋の顔があった。

(どうして俺じゃだめなんですか。)

何か言いたげだった後輩は、すっと俺から退けてごめんなさいと俺でも分かる作り笑いをして、その場から離れた。


どうせ僕らは一方通行



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無自覚で霧野と神童は両想い。そんな霧野先輩がもどかしい狩屋くん。


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