倉間と南沢


熱中症かな、頭がズキズキする。水分を採らないと、と鞄を探ってみるけれど生憎ペットボトルは空だった。仕方ない、家に戻るまで何も無いから我慢するしかないな。
痛む頭を押さえながら足を動かす。あとどのくらいで帰れるだろうか。暑い日射しが肌を焦がす。あーつい。流れる汗はTシャツに染みた。やばい、結構やばいかも。さらに痛くなってきた頭はズキズキギンギンする。そんな頭に、耳に、優しい声色が。
「きったねぇ顔。」
目の前には涼しそうな顔の先輩がいた。あ、南沢さん。そう言おうとしたけど声が出なかった。しかし首筋にきた冷たすぎるその刺激に思わず悲鳴という奇声が出た。
「う…うえ?」
「ほら、飲めって。」
死ぬだろ、と差し出したのは先ほど俺の首筋に当てたペットボトルに入った飲料水だった。
「お前が帰ってんの付けてた。」
「最低。」
「いいじゃん、脱水症状しなくて。」
まぁ。まぁ、そりゃそうだ。とりあえずそれ飲みたいから、早くくれ。バッと奪い取り、キャップを開ける。冷たく冷えたそれが喉を通る。今度は冷たすぎて喉が痛い。ぷは、と手の甲で口を拭けば、行儀わる、と南沢さんが眉間にしわを寄せた。ワイルドって言ってください、そう言えば仕方なさそうに小さく、とても小さく笑った。

あれ。そういえば、いつの間に頭痛が治まったのだろう。水を飲んでからだろうか、いやその時には痛くなかった。首筋にペットボトルを当てられた時は…痛かったな。多分。多分、痛みが治まったのは。
…いや、そんな訳無いよな。恥ずかしすぎる。
「何だよ。変に真面目な顔して。」
不思議そうに南沢さんが顔を覗き込んできた。
「いや。」
南沢さんのお陰かも。と俺は呟く。
しかし南沢さんは、は?と顔をしかめて聞き返した。

そしてなんだか言った後々、考えてみれば自分で自分が恥ずかしくなって、何でもないですと大きな声で返事をし、もう一度ペットボトルのキャップを開けた。

鎮痛剤は

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