ヒロトと円堂



「もうすぐ夕食の時間なんで、戻ってきて下さいね〜!!」

マネージャーの声がグラウンドに響く。気がつけばもう空はオレンジ色に染まっていた。俺はボールを蹴ろうとしていた足を止め、それを拾い上げる。一回蹴っておきたかったかな。そう思いながらボールをかごの中に入れようとした時。
「ヒロト。」
後ろからそう名前を呼ばれ振り返ってみれば、ゴールの前で両手を広げ笑顔で構える円堂くんが居た。
「最後に蹴っとこうぜ!」
ニカッと笑顔を綻ばせる。なんで分かったんだろう、と少し考えたけれど蹴った後で聞こうと思って、うんと返事を返した。


夕暮れ時は日が沈むのが早く、一蹴りしただけで辺りはもう暗くなり始めていた。ナイスシュート、と声をかけられて円堂くんもね、と笑いかければまたヒマワリのような笑みを浮かべた。


「さっきヒロト、物足りなさそうだったからさ。」
そんな事を話しながらボールを拾う。
グラウンドにはもう俺たち二人しか残っていなくて、ボールをかごにしまったら何もない広いだけの芝生がひろがっていた。どちらも何も言うことはなく、ただこのグラウンドを眺めながら沈黙に浸る。

「あ。」
と、沈黙を壊したのは円堂くん。視線を上に泳がせていて、何か見ているようだった。
「どうしたの?」
そう聞き返しながら視線の先を探してみる。辺り一面にひろがるのはまだ暗くなりかけの夜空。端はまだ若干オレンジ色を帯びていて、でも藍色に呑み込まれそうなそんな空。
「あそこ、一番星じゃないか!?」
ホラホラとはしゃいで指差す先には、ちっぽけだけれど微かに光る星があった。

「本当だ…!」
思わず俺も笑みが溢れる。
「ヒロトも星が好きだったんだな。」
「え?」
思いもよらない言葉に驚いた。円堂くんの方を見てみれば、さっきと変わらず空を眺めていたけれど、俺の方に視線を落とす。
「さっきスゴい自然に笑ってたぞ!俺も星が好きなんだ〜。」
そう言ってまた、星空を見上げた。



別に星が好きな訳じゃない。と、いうか逆に嫌いかもしれない。星とか宇宙とか、昔の自分を思い出すような気がして。だからあんまり空を見上げることもなくなった。
けど、そんなにさっきの俺は笑っていたのだろうか?


少し考えて、一つの結論に至った。そうしたらまた少しおかしくなって、クスリと笑った。
「どうしたんだ?」
不思議そうに円堂くんが顔を覗かせる。
「ううん。…俺、星が好きみたいだよ。」
一瞬キョトンとしたけれど、またすぐ「そっか。」と言って二人でグラウンドを離れた。



君がいるから



(君と一緒に見たから…なんて、理由として成立するかな?)





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ヒロ円は見るのは好きなんですが、書くのは初めてで…。
あれ、円堂笑うしかしてない…とか思ったんですが多目にみてやってください(^q^


森澤さま、相互ありがとうございました!!



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