南沢と拓人


「君、可愛いね」
「さすが南沢先輩慣れてる〜!!」
「いっぱい言ってるからじゃないですか〜?」
「ちげーよ。相手が居ないから言えるんだよ」

倉間たちが提案した遊び。正しくはどうやれば女の子を落とせるか、という事を教えていた。しかし俺は彼女が居るわけでもないし、チャラチャラとナンパをするわけでもない。それに女子を落とした事もない。なのに倉間たちは輝かしいほどの期待の眼差しで、俺に教えてほしいと言うものだから、高い俺の自尊心が仕方ないなと受け入れた。

「南沢先輩の滲み出る余裕さがカッコいいですよね!!」
「色男〜!!」
「止めろよ」
ベタ褒めされてすこし気分が良い。ちょっといい気になっていたら、丁度神童が近くを通りすぎた。それを見兼ねた倉間が手招きで神童を呼び、こちらに連れてきた。

「言っちゃあ悪いけど神童って女顔じゃないか?これだったら南沢さんも恥ずかしくなるんじゃないですかー?」
また悪そうな顔で倉間がそう言った。本当に言っちゃ悪いだろ。神童が真っ赤な顔をして恥ずかしそうにうつ向いた。
「お前、ふざけんなっての。神童は男だぞ?」
なぁ、と神童の肩をぽんと叩けば神童ははい、と顔をあげた。

「じゃあ、俺は着替えてくる」
「えー、俺もっと南沢さんの恋愛武勇伝聞きたかった〜」
口を尖らせながら誰かがそう言った。しかし俺は振り向くことなくさっさとその場から離れた。

じゃないと真っ赤になった顔が後輩にバレそうだったから、なんて口が裂けても言えるわけない。

偶然が重なった、だけ

(俺が男の神童に…?)
(いや偶然に違いない。だってあいつが涙目で、顔が赤くて、偶然可愛く見えただけだ!)

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