剣城と拓人


「キャプテン。」
ねっとりとした嘲笑うかのように剣城が俺の名前を呼んだ。少しだけ振り返り、すぐにそのまま俺は歩き始める。
「おいおい無視かよ。」
チッと舌打ち混じりにそう言われ、仕方なく後ろを向く。
「用はなんだ。」
「呼んだだけ。」
ニヤニヤと口端をあげて楽しそうに俺の背後に付いた。全くこいつは何が楽しいんだ。気持ちが悪い。不快になる。
「用が無いならむやみに呼ぶな。」
そう言って再び歩き始めようとした時、ぐいっと右手を引っ張られてバランスが崩れた。あ、と声が漏れたのと同時に剣城の顔がすぐ近くにある事に気がついた。
「温度差って分かります?」
イメージとは間反対の流暢な敬語と今のこの体制と状況に驚いて反応が出来ない。
「嘘も真も紙一重って言いますよね。」
だから、なんだ。
そう言おうとした時、霧野が俺を呼ぶ声が聞こえて我に返った。パシリと剣城の手を振り払う。
「練習に戻れ。」
今度は後ろを振り向くことなく、グラウンドに向かった。
あいつは、嫌いだ。


(好きと嫌いの温度差/ひよこ屋)
(ssから)

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