倉間と南沢


「ほら、タオル」
自主練習が終わり休憩時間に入る時、先輩がいきなりタオルを差し出してきた。
見るからにふわふわの新品。てかあの先輩が、あの南沢先輩が俺にタオルを差し出す?おかしいだろ。

きょとんと固まる俺に構わずグイグイとタオルを押し付ける。見るからに暑そうなのは先輩で、今にも頬を伝う汗は流れ落ちそうだ。
「いや、俺ベンチのとこにタオル置いてますし」
「いーから、ほら」
暑さで顔が赤いのか、いやそれとも、なんて考える俺は末期だな。そう思いながら渋々タオルを掴んで顔を拭く。で、このタオルはどうすればいいんだ?行き場のないタオルを持った両手を先輩が見る。

するとニヤリと嬉しそうに笑い、一気に嫌な予感しかしなくなった。何をしようとしているんだろう、そう思いながら目の前の先輩を見つめていたら、ポケットから何かを取り出して俺のポケットに突っ込んだ。

タオルを片手に持ち、入れられた物を出してみると500円がひとつ入れられていた。どうしろと?ともう一度先輩の顔をうかがえば、いつものように髪をかき揚げて一言。
「そのタオルやるからさ、それでジュース買ってきて。俺ソーダね、それか炭酸系。よろしく。」
ポンと肩を叩かれ、さっさとベンチに戻っていった。

面倒だな、でもタオル使っちゃったし、お金まで貰ったら行くしかないか。小さくため息をついてから、もう一度汗を拭った。ふわりと鼻を擽る先輩の香りが少し心地良いな、と無意識のうちに考えた自分にイライラモヤモヤしながら自販機に向かった。


君とタオルとソーダ水


タイトル/ひよこ屋
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