南雲と涼野


「うっわ〜、降ってんな。」
さっきまでは雨なんて降っていなかったのに、ちょっと寄り道で本屋に寄っていたらこの有り様。バケツの中に入っていた水を一気に逆さに落としたように土砂降りの雨。ひとつの雨粒が大きくて地面に跳ね返る音がバンバンとうるさい。
「本屋というのは時間が経つのを忘れてしまうな。」
一つ小さなため息をつきながら風介はつい先ほど買った小説を取り出し始めた。
「何やってんの?」
「何って本を読もうかと。」
「いや、帰ろーぜ。」
「私は雨に濡れるのが嫌いなんだ。止むまでここで雨宿りしよう。」
ペラペラと新しい本を開く。いやいや、さっさと帰りたい。空を見上げても一面灰色の厚い雲で覆われていて、止む気配は全く無い。

「よし。帰ろう。」
素早く風介が持っていた本を掴み自分の鞄に突っ込む。頭に疑問符を浮かべながら俺の鞄を見つめる風介の腕を引いて全力で走る。
ぴしゃりぴしゃりと雨が散る。だんだん冷たくなるシャツは肌にくっついて気持ち悪い。

「濡れる!!」
「仕方ねーだろ、これ絶対止まねーから。」
ブツブツと後ろで不満を言われる。けれどちゃんと走りに付いてきてくれているのには感謝する。
「私は暑さと同じくらい濡れるのは嫌いなんだ。」
まだ言ってんのかよ。もうすぐ家だってのに。じゃあと俺は叫ぶように
「後で乾かしてやるから!」
と雨にも負けないような声でそう言った。


雨音


「私ばっかドキドキしてバカじゃないか」そう小さく呟いた風介の声は雨の音にかき消されて、俺の耳には届かなかった。

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