吹雪とヒロト


喉乾いたね、と吹雪君が呟きグラスを取り出して冷蔵庫から何かを探し始めた。
「お茶なら机の上に置いてあるよ?」
俺は机の上に置かれっぱなしの少しぬるくなった麦茶のボトルを指差した。水滴がボトルから滴り机を濡らしている。
でも吹雪くんは少しもこちらに目を向けず、ごそごそとグラスに氷を入れ始めていた。
「何を注ぐの?」
そう聞こうとしたら、ふわりと香ばしい香りが鼻孔を通り抜けた。
「はい。どうぞ。」
笑顔で渡されたのは綺麗に注がれたコーヒーだった。カラン、と氷が重なる音が涼しい。
ありがとう、と受け取ったけれど俺はそのまま固まるだけで。両手でグラスを持ち、どうしようかと少し考えた。
ちらりと吹雪くんを横目で見れば、なにくわぬ顔でコーヒーに口を付けていた。どうしたの?というような目で俺を見る。ハッとなり目の前のコーヒーを一口飲み込んだ。
うげ、苦い。
そうとう嫌そうな顔をしたんだろう。吹雪くんがクスリと笑いながら、お砂糖を出してくれた。
「ヒロトくんには、まだ早かったかな?」
「・・・ありがとう。」
ぽちょん。お砂糖の固まりが真っ黒なコーヒーに溶けていく。うん。甘い。


甘い甘い



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