風丸とヒロト


ヒロトが隣で今日配られたプリントを丸付けする。シュ、シュと規則正しいスピードでペンが滑る音。全部合ってるなんてさすがだな、と思っていたら、ふとヒロトの持つ三色ボールペンに目がいった。じっと見ているとヒロトの手の動きが止まり、どうしたのと首を傾げた。

「ヒロトのそのペン」
「ん?」
「青が無くなりそうだ」
「え…、本当?」
少し焦ったようにヒロトはペンを見た。

赤・青・黒の三色ボールペン。普通ならよく使う赤が最初に無くなり、次に黒。そして全く使わなかった青だけが残って捨ててしまう、というのが普通…というか大体そんな人が多いと思う。
そんな事を思ってなんだか不思議に感じた。まぁよく考えれば偶然だってこともあるし、そんな気にすることじゃないんだけど。
一応聞いた理由を簡単に述べて、一呼吸置いた後。

大したことじゃないんだ、そう笑いながら言おうとした時。
ヒロトは視線を下にうつ向かせ、少し朱に染まる頬を見えないようにプリントで隠していた。
そして、先にヒロトがポツリと何か言った。
ん?と聞き返せば、ヒロトは顔をうつ向かせまた何か言った。
下を向いていて、さらに小さい声だから何を言っているのか分からない。グッと耳をヒロトの顔に近づける。
と、本当に小さな小さな声で「風丸くんの色だから」と言った。

「風丸くんの色だから、早く使っちゃうんだ」

チラリと下を向いた顔から見える表情は、多分とても真っ赤だった気がする。
ヒロトも、俺も。


三色ボールペン

今度一緒に文具店に行こう。そうヒロトに言えば、嬉しそうに青を買わなきゃ、と口を綻ばせた。その時に俺も赤のペンをたくさん買わないとな、そう思ったのと同時になんだか優しい、照れくさいに似た気持ちになった。

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