南雲と涼野


席替えをした。
私は一番後ろの真ん中。なんと晴矢はその右隣になった。

「やったな。」
「うるさくて授業に集中できなさそうだ。」
「おま、俺がうるさいってことか!?」
そんな事を言う晴矢を放って、教科書を広げる。授業は始まったばかりだ。前と少し違う位置で黒板が見にくい。なので右に体を傾けてみる。すると、すぐそばに晴矢の顔が近づく。
「お前にしては積極的じゃねーの?」
「違う!」
クスクスと笑う晴矢に私は小声で否定する。他意はないし、全くの偶然だ。勘違いも甚だしいこのバカめ。
そう思いながら姿勢を戻そうとすれば、右手をグイッと引っ張られる。何かと思って晴矢を見れば、企んでいるといわんばかりの表情で笑っていた。
「なんだ。授業中だぞ。」
「なぁ、後ろだしさ。こういうのもバレないよな。」
そういいながら顔を近づけてくる。やめろ、と小さく呟くが近づく顔の距離は縮むばかり。思わず目を閉じれば、ポツリと耳元に囁かれた。
「手、繋げられんじゃん。」
「…は?」
ギュッと右手は晴矢の手に握られていて、言い終われば何も無かったかのように前を向きながらノートをとりはじめた。
少しあっけにとられていた私は、隣でひたすらシャーペンを動かす晴矢を見つめる。そうしたら晴矢が私の方を向いて、期待した?と口を動かすものだから違う、とまた反論する。顔赤ぇ、と晴矢が小さく笑いながら呟いていたが聞こえないフリをした。

右手は晴矢の左手と繋がっていて、ノートをとることができない。まあそれ以前に、晴矢が隣に居るというだけで私の心臓はずっと鳴りっぱなしなわけで。授業なんか頭に入るわけがない。それなのに、手のひらから伝わる体温や気持ちが嬉しくて、さらに私の心臓は高鳴るばかりだ。手を離すことができない。

後で晴矢にノートを見させてもらおう。そう私は心の中で思い、クスリと少し笑った。



君の隣じゃうるさすぎて



(最初のうるさいの意味、君に分かるかな?)


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