白い花が咲いていた。せっかく背が高いのに、まるで俯くように咲くその花は、よく晴れた日の昼下がり、風に揺れていた。

花はたくさん咲いていた。全て寄り添うようにして光を受けようと懸命に、けれど自信を無くしたように、同じ方向を向いて咲いていた。
舌状の細やかな花弁を地面に向けて伸ばす、その花の中心は、下を向いてこそいるが鮮やかな黄色をしていて、小さな小さな太陽のように燦然としていた。

花ばかり見ていたところを少し足を引き下げてみて、視線を上向きにすると、後ろには目一杯に、凛と広がる空が見えた。ファインダーの様に目の焦点を合わせて見ると、春の青い空と背の高い白い花は、よく似合っていることに気がついた。


けれどもそれは、道の外れで忘れられたように咲いていた。

(こんなに、綺麗なのに)



刹那、揺蕩うその花に水を与えようと、傍に置かれていたジョウロに水を入れてみようと思いついたのだ。気が付けば手にはそのジョウロを持って、水道のある場所まで駆けていた。
不思議と、自分には、今こうやってこの花に水をやるということが、ひどく日常的な風景であることのような気がした。

ただただ、この花を絶やさないようにしなければと、それだけ思っていた。

(あ、)

ふと、きらきらと輝いたそれは。

(虹だ)

手元に出来た、地面の水溜まりとの間の小さな虹だった。





いくらか日が経っても薄れない思いには我ながら感心しているところだった。ジョウロに水を入れて、花へと注ぐ。

(水は、与えられていないのだろうか)

花のことを知ってからもうここへは何日も通っているが、自分の他に水を与えている者がいるという痕跡は見当たらない。ここに来てみるといつも、地面は乾いていた。

今日も変わらず太陽を見る白くて背の高い花は、やはり自信が持てないようだった。

(名前があったなあ)

そういえば、この花の名前は。
手元に出来た虹を見ながら考えてみたけれど、結局分からなかった。
虹を掴めるかと思った。掴みたくて手を伸ばしてみたが、儚いもので、掴めるはずもなく、消えてしまった。





その翌日は生憎の雨だった。終日降り続いたその雨は、いつも乾いてた地面を潤すには十分すぎた。今日は水を与える必要はないだろう。
雲で隠れた太陽は見えない。それでも花は、太陽に焦がれているのだろうか。
まだ、その花の名前は思い出せない。

(白くて、背が高い)

その花の名は。






あんなに、焦がれていた太陽が輝いているのに。花の咲いていた地面に、白いものはどこにもなくなってしまった。

(ああ、そうか)

道端に咲くあの花には、あんなに水はいらなかったんだ。
背の高い花。その花が咲いていたところを見ても、ただ空が見えやすくなっただけだ。空は変わらない。花を見つけたときと同じような綺麗な青色だった。

(枯らしてしまった?)

太陽を向こうとする花。自信のなさそうなその姿に惹かれて、応援してあげたかっただけなのに。

(太陽を向けたかもしれないのに)

枯らしてしまった。同じように枯らしてしまった。

「……追想の、愛」

白くて背の高い、綺麗なのに自信のなさそうな、枯れてしまったその花の名前は。

「ハルジオン」


“名”












11/0328

幸村誕生日のつもりでかいてたけど計画変更。遅刻すぎて笑える。ごめんなさい。
もう二重でごめんなさい意味分かんないですよねでも気に入ってます。色々想像しちゃってください。
バンプのハルジオン妄想です。ほんttttっとうに申し訳ありませんでした。
次はあほなのかきたいな…ではお粗末さまでしたー。閲覧ありがとうございます。



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