※海堂くんの弟葉末ちゃんのキャラ捏造してますので注意!










「葉末ちゃん見える?」
「うん、見えるよ。兄さんまた振られちゃったね」
「薫ちゃんってばもうこれで13連敗目ね」
「やっぱ怖すぎるんだよ顔が。食べ物ないと無理じゃないかな」
「手強いねえ。さすが青学のアイドル猫」
「なんだ猫かよ!!!」
「桃城さん、いたんですか」
「桃城先輩、こんにちは」
「いたんですかってひっでーな!」

 いつからそこにいたのか、薫ちゃんの姿だけを夢中で追っていた私達は、桃城さんの存在になど気づくはずもなかった。窓の外、眼下にある中庭では連敗記録を更新した薫ちゃんが、しょんぼりと肩を落としている姿が見えた。随分と可愛いものだった。


「海堂の恥ずかしい告白シーンが見れるのかと勝手に思っちまったじゃねーかよ」
「まさか。僕と名は兄さんの勇姿を見届けたまでです」

 そう、私と葉末ちゃんは今やもう、昼休みにはこの光景を目にするのが習慣になっていた。

 三ヶ月程前のことである。私達、私と葉末ちゃんは、青春学園中等部、俗に言う青学に念願叶って入学を果たした。海堂葉末、通称葉末ちゃんは、同じく青学中等部三年に在籍している、かの有名なテニス部部長、海堂薫の弟君であった。
 そんな凄い二人のことをなぜ私のような一般市民が、可愛らしい敬称をつけて呼んでいるのかというと、単に私が昔から二人とは旧知の仲だからである。昔から隣近所で、更に私が葉末ちゃんとは同い年だということもあって、海堂家とは懇意にさせてもらっている。

 薫ちゃんが可愛いもの、特に小動物が好きだなんて、知っていたけど実際に目にしたときの衝撃はすごかった。薫ちゃんに会いにその姿を探したとき、その時に見た猫に構う薫ちゃんが、可愛いくて可愛いくて。それから毎日こうして、葉末ちゃんと二人で眺めるようになってしまった。



「薫ちゃん落ち込んでるよ……可愛いなあ……」
「はあ?!」
「はあ……」

 窓の外、もとい薫ちゃんを眺める私が呟いた言葉へは二通りの反応があった。物凄く驚く桃城さんと、もう見慣れてしまった葉末ちゃんからのため息を頂いた。余程驚いたのか、しばらくぱちくりと目を開けて微動だにしなかった桃城さんが、震える指で私と薫ちゃんを交互にさしながら口を動かした。

「海堂が?!可愛い?!」
「そうですよ。とっても可愛いです」
「いや……いやいや……いや、ねーだろ」
「そんな否定しなくてもいいじゃないですか」

 桃城さんが物凄い勢いで首を振りながら否定をしてきたから、少しむきになってしまった。薫ちゃんの可愛さを説明しても理解してくれるなんてことはないと思うし、第一桃城さんにそんなことを言えば絶対に薫ちゃんをからかいに行くから、いうつもりなんてない。薫ちゃんが可愛いなんて、知ってるのは私と葉末ちゃんだけでいい。

「どう転んだら15の男が可愛くなるんだよ。なあ海堂弟」
「葉末です。兄さんは特別ですよ。名は兄さんが好きなんですから」
「え、そうなの」
「はい。そうですけど」
「理解できねえ……」

 別に理解なんてしてくれなくてもよかったのに、桃城さんは頭を抱えて考え出してしまった。私にだって理解できない。だって気がついたら好きだったから。
 小さい頃はあんなに可愛かったのに、すっかり男として完成しつつあるその姿を目で追わない日はない。既に葉末ちゃんだって私より身長が大きくなりつつあるのに、いつのまにか薫ちゃんは私を見下ろすようになるまで成長してしまった。小動物と思われて可愛がられるのもそれはそれで嬉しいのだけれど、やっぱり女の子として見て欲しい。
 葉末ちゃんは時々ひどいけど、一番の味方だった。今だって私このとを応援してくれている。何をするにもいつも一緒だった私達は双子のようだとよく言われたけれど、それはとても嬉しかったし、本当にそうだったらいいのにと何度思ったか。
 二人のことは大好きだ。けれど、薫ちゃんに対しての好きと、葉末ちゃんに対しての好きとは、やはり私の中では違うものだった。



「ねえ葉末ちゃん。みいちゃん戻ってきたよ。私手伝ってくるね」
「僕も行く。上手くいくといいけど」
「あっ、おい!待てよ!」



 中庭を目指してばたばたと駆け出した私達に、桃城さんまで着いて来てしまった。

「着いて来ても面白いことなんてないですよ桃城さん」
「つれねーこと言うなよ。見るだけ見るだけ」
「もう、見世物じゃないんですよ。あっ、薫ちゃん」

 体を必死に小さくしている薫ちゃんに声をかけるとその背中が大きく跳ねた。薫ちゃんと青学のアイドル猫との距離はまだまだ警戒の色が見える。

「おいでーみいちゃんおいでー」
「……おい名」
「おおー、さすが」

 いとも簡単に私がみいちゃんを抱き上げることに成功すると、薫ちゃんの目の色が変わる。突然の私と葉末ちゃん、桃城さんの登場に驚いて嫌そうな顔をしていたけれど、それはすぐに変わった。喉を鳴らして私に甘えるみいちゃんに、薫ちゃんは吸い寄せられるように近づいてくる。

「みいちゃん、薫ちゃんに優しくしてあげてね」

 にゃあ、と私の言葉に返事をするかのように鳴き声を返してくれる。ふるふると震える薫ちゃんに、みいちゃんを渡してみると、その優しい手に抱きかかえられたみいちゃんは喉を鳴らした。

「はっ、葉末ちゃん……!か、か、かお、薫ちゃんが……!」
「長かった……!兄さんおめでとう!」
「かかか海堂がねねねねね猫かかえてる」
「うるっせえ!つか桃城テメーいつからいやがった!!!」
「薫ちゃん可愛い!!!」
「……っうあああああ!!!」
「兄さん!」
「薫ちゃん!」

 可愛いと言うと逃げる、貴方が好きです。










12/0429

葉末ちゃんがかきたかったんだ…
すみませんでした。あとタイトル寒くてすみません。本当すみません。



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