「……どうしたの」
いやににこにこしている幸村が着々とケーキを食している私を観察している。こうもじっと見つめられるとなんだか食べにくくて、声をかけずにいられなかった。
「ううん。食べ方、可愛いなあって」
幸村が私に好意的な感情を抱いてるのはなんとなく分かってた。ただこんなにも直球で可愛いとか言われると、耐性なんてろくについてない私はすぐにポーカーフェイスとかできない。真っ赤であろう顔を見せたくなくて、俯いていると、幸村はふふって笑いやがった。本気で、そんな事思ってるのかな。ちらっと目を上げて幸村を見てみると、目尻がさっきより下がってて、不覚にも可愛いと思った。
ドリンクバーの所で、仁王くん、丸井くん、切原くんの笑い声が聞こえる。すっかりケーキを食した私は、温かい紅茶を飲もうと思ってそっちに近づくと、私に気がついた三人は興奮気味に私に話しかけてきた。
「やゔぇえあ!!ちょ、帆乃夏!」
「ほの先輩ほの先輩!!これやばいっすこれ!」
「ちょお帆乃夏!これ飲んでみんしゃい!」
「えっ…………………何入れた?」
言わずもがな、おそらく全種類に挑戦した色をしている、その可哀想な飲み物を三人は私に差し出してくる。それはそれは素晴らしい笑顔で。
「いーからいーから。案外うまいんだって」
「え、丸井先輩本気っすか」
「……ブンちゃん、とうとう味覚おかしゅうなったんじゃな……」
「え?」
笑顔だけどきょとんとした声を上げる丸井くんは、この二人が言っている意味が分かってないらしい。突然、丸井くんが握っていた物体Xが宙に浮く。それは柳くんの仕業で、丸井くんから奪った物体Xをまじまじと眺めては、ふむ、とだけ呟く。
「コーラ3%、カルピス7%にオレンジジュース11%、烏龍茶5%……、その他諸々と言ったところか」
ただ見ただけでパーセンテージまで分析できるものなのだろうか。柳くんのその予測は大体当たっていたらしく、三人は柳くんをすごいすごいと褒めそやしていた。
「ところで、幸村君」
宴も闌、思いがけず参加する事になった私はこの濃いメンバーの中、浮くこともなく、弾かれることもなく、不自然なくらい自然にその宴に馴染んでしまっていた。その中で突然、柳生くんが幸村に問いかけた。柳生くんは、メガネを中指でくいっと上げた後にちらりと私を一瞥する。その動作だけで彼が私に対して言わんとしている事が分かった。そして柳生くんが口にしたのは、その場の誰もが思っている疑問だった。
「彼女はなぜこの場にいるのですか?」