は?いや違うし下心とかねーしむしろ軽く悟りぐらい開くか的な感じですが何か問題でも。煩悩?え、何それえ、食えんの?いやいやだから俺がこのコンビニに通うのは、コンビニににしか売っていないお菓子が目当てなのであって(その時点で煩悩あるとかは言うな)、そのお菓子を買うために帰り道にあるこのコンビニに寄るのであって、そしてこのコンビニに2週間前からいるバイトの新人がたまたま、割と俺の好みなのであって。いやいや違う違う違う違うノンノン。下心なんて微塵もねえから!


そんな俺は今日もこのコンビニに来てしまった。いや、そりゃ野郎の店員がいるよりも可愛い女の子のほうが嬉しいだろ。だからこうやってあいつを探してしまうことも超自然現象だろ仕方ねーよ男の性なのアーユーオーケー?またくだらないことをうだうだ考えつつ若干目を泳がせながら自動ドアへ踏み出せば、ドアが開いて女の声が聞こえてきた。

「いらっしゃいませー」

店内に入ると俺を含め、客は数える程しかいないようだった。夕方の時間帯だから少ないのはいつもの事だ。

(あ、いた)

笑顔で挨拶をする、あいつの姿を見つけてしまった。いやいや、別にこうも毎日毎日通わなくとも、あいつも立海生だから学校で会えるっちゃ会える。たまに学校でも見かけるし。だけど当たり前だがあいつを学校で見るときは必ずと言っていい程友達と一緒だ。そして俺は仮にもあの立海テニス部のレギュラー。この俺があいつに話し掛けるなんて不自然極まりない。接点など毛ほどもないのだから。事実だけどなんか悲しい。とどのつまり俺がこうも足繁くこのコンビニに通うのはあいつに話し掛けるがためだったりする。いやいやいやお菓子のが重要だけど!まあそれが未だ成される気配すらないのは、俺の単純さ所以。あいつの声が聞こえてくるだけで嬉しくなる。レジを挟んで向かい合うだけで目もみれなくなる。俗に言う営業スマイルだと分かってるのに、笑顔を向けられるだけで恥ずかしくなる。それが相俟って俺は、嬉しいやら恥ずかしいやらで結果、話し掛けるなんて到底無理。

という葛藤をここ2、3日繰り返しているだけ。こんな単純な俺があいつに話しかけて友達になって、俺からその、こ、告白とか……までたどり着くのに一体何年必要か誰か教えてほしい。

(あー、何買おう)

悲しきかな、染み付いた感覚というのは無意識にも作用してしまい、俺の足は例に洩れずお菓子の棚へと向かう。これ一種の無我の境地ってやつじゃねえのかな。

「ありがとうございましたー」

ぼーっと何を買うか適当に物色していたら、店内にいる客はいつのまにか俺一人になっていたらしい。おいおい、何この天才的タイミング。チャンスだろこれ。
状況を察した俺は鼓動が早くなる。普段は然程信心深くない俺も今なら神様を信じてもいい。今あなたがくれたこの時に感謝を!アーメン!
急げとだけ早鐘を鳴らす頭からの命令の中、俺は適当にいつものガムを掴みレジへと行く。ちらりとこちらを見ていらっしゃいませと笑うあいつの顔が目に入る。やべえやっぱ可愛いわ。

俺が目の前にガムを置くと素早くバーコードを読み取る。手際がよくなっていた事に何故か感動した。あーでも時間稼ぐためにまだ何か買えばよかったかな。じゃなくて!急げ、何か話しかけなきゃ。また何もできないで終わっちまうから、何かあるだろ、何でもいいから話せよ俺!

「あの、丸井くん、だよね?」

「へ、え?あ、あぁ」

まさかの展開。俺がうだうだしてたら向こうから話しかけてきた。あまりにまさかだったから、準備できなくて間抜けな声が出てしまった。やべえ超かっこ悪い。

「やっぱり!私、前に丸井くんのテニス見たことあってね!一回話してみたいなあって思ってて」

「え、うん」

「あ、私、姓名。よろしく!丸井くん風に言ったら、シクヨロ?」

そう言って俺の真似して笑う姓が可愛すぎて頭が沸騰しそう。

「丸井くん、いっつもこのガム買うよね。これ、好きなの?」

「えっ!?……あ、あの!」

「うん?」

「は、初めて、見たときから、その、可愛いなって、思って、て……」

「…………え?」

やってしまった。きょとんとする姓を見て我に還った。なんて早とちりしてんだ俺。落ち着けよマジ何か有り得ないくらい恥ずいんだけど。今話してんのはガムの話だよバカか俺。それを早とちりっておま、なんかもうどうにでもなれ。万歳!早とちり万歳!自分で作り出した空気とは言え、気まずいし痛すぎる。きっと今の俺の顔は真っ赤を通りこして真っ青だろう。汗とか半端ねえわ。でも言ってしまったことは取り返しが付かないわけで。第一嘘じゃねーし。てかもうこの際認めるけど通ってたのはこいつがいたからなんだよマジ菓子とかどーでもいいし分かったか畜生。いやでもやっぱ死ぬほど恥ずかしいわ。

姓はまだ固まっていた。それは幸いだったかもしれない。段々と染まりゆく頬の赤を目にする前に俺は、いたたまれなくなり天才的速さで店を出た。もちろん支払い商品も忘れて。



あああもう、お前可愛すぎるから!







09/1114

次の日結局お金払いにまたコンビニ行くぶんぶんでした






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