「いえいえいえいえそんな滅相もございません」

「嘘つけ」

嗚呼、アア、嗟。どうしてくれようか。
態とがましいと自分でも分かってるさ。けれど嘘ではない。どうして嘘などつけようか。信じてくれはしないのだろう。


「こ、これは、ぐ、偶然、デスヨ……?」

「えらく運がええのう。天文学的確率で直撃しゆう」

「あのすみませんがどいていただけますでしょうか」

「上におるんはお前さんの方やき」

「……はっ!」

言われてみればそうでした。






どうしたものか。もとはこやつがやらかした所業が原因だということに相違ないはずなので私は悪くない。唯一悪いとすれば、私の迂闊さと、愚鈍さか。挙げ連ねてみると唯一ではなかったようだ。

か弱き乙女に棚の上へ積み上げられた段ボールの中に山程詰められたスコア表を取れなどと、いじめ、苦行、嫌がらせのいずれかに違いない。唇の他に体を組織する物が色々負傷した気がするけど大丈夫か?大丈夫なはずがない。



「はあぁぁぁー……」

「……失礼な奴やの」

ため息も出さずにいられない。例え本人を前にしていても。今時こんな初ちゅー体験談なんて少女漫画でも最近はそうそう拝めない。ゲームでは見たような気がするが。

確かに初めてでした。初めては夕日が映える海岸で……とか、私はそんな美しい幻想を抱く可愛らしい(笑)乙女ではない。残念な女子だ。なので後々考えて納得できるようなものだったらいいやと思っていた。けれどこれだけはどんなに時間をかけて考えても納得できないと思う。

手を伸ばしてもあと少し届かなくて、無理だと分かると自棄になるこの性格を呪おう。指先が本の少し箱に触れて思わず浮かれた私の単純さを呪おう。そして何より台を踏み外したあの瞬間を呪おう。私はなんと軽率であったか。


「初めてやった?」

ニヤニヤしおって、意地の悪い奴だ。

「は、は、じめて、でした、けど!」

「俺も」

「嘘をつけ!!」

そればかりは信じられないぞ仁王雅治。貴様の恋愛遍歴など委細承知はしていないが、今までの彼女がやたら可愛らしいということは知っている。美少女という美少女は食い尽くしたのではないのか。

「好きでもない女とキスなんぞせん」

「あんたいつか刺されるよはい決定ー。あーあーあー!!!!!!私なんかで、しかもこんなシチュエーションでごめんなさいね!!!!」

「別にきっかけはどうだってええが」

「いやいやきっかけも結構大切なんじゃ、おい、待て、きっかけって何の」

「お前さん、俺に言わせる気いかいの。中々攻め上手やのう」

「い゙い゙い゙状況が分からない!!!てかそろそろ退いていいですかってぎゃあああ手を掴むな!!!」

ぐるりと視界が回る。即ち、私は組み敷かれた。
それはさながら私が今までATフィールドを全開で張っていた大切な部分が次々と蹴破られていくようだった。

「初めての責任、とってもらうぜよ」


そして暗転、後、ハッピーエンド。







BAD

ROMANCE!!





下賎な恋愛でごめんなさい!








10/1231

今年最後がこんなものでごめんなさい。仁王がほんとに初めてかはご想像にお任せしますw
来年もどうぞよろしくお願いします!









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