夏の大三角形とやらを覚えたらしい名は、星の名前を呟いて聞かせてくれた。ありがたいんやけど俺としては何のことかぜんっぜん分からへん。名に冬はって聞いてみたけど覚えとらんらしい。夏だけでも別にええかって言ったらちょっと頬が膨れおった。何が不満やねん。名が言うには大阪の空はちっさいんやて。せやから星覚えられへんのやて。あんま関係ないと思うんは俺だけかいな。星とか普段気にせえへん俺には全く理解に苦しむ。そんで俺らが今何しよんのかっちゅうと天体観測。でも見よんのは本物やない、人工物っちゅー何とも悲しい仕様。

「向こうの一番光ってんの、スピカ言うねん」

「ふーん」

えらいこざっぱりしとるこいつの部屋には机にベッド、空の本棚にそれとプラネタリウム用の機器しかない。今は昼間のはずやのに暗いのは何でやって、せやないと星なんて見えへんからカーテン閉めとる。その辺は天然物と一緒なんやなとか思ったり。

「流れ星とかないん?」

「ある。じゃー光そっち見はっとってな」

そう言うて、今まで俺の肩に頭置いとった名は俺と反対方向を向いて、俺の背中にぺったり自分の背中くっつけて座った。背反ってこう言う事言うんやったっけ、何や意味違うたような気いする。

今なら名の顔見えへんし、星でも見ながらちょっと考え事しようと思う。つくづく変な間柄やってのは自分でも分かる。部屋暗くして二人だけで隣座ったり背中合わせたりで、密着とまではいかんのやけどある程度くっついて天体観測とかできるレベルではあるんやけど、特別に何かあるって言う訳やのーて所詮そこまでしか行ってへん。俺は何とか進歩させたいて思うけど、名は何考えとんのかよー分からん。一応嫌われてはない、と思うんやけど、いや、そー思いたいだけかもしれへん。だってこいつ何考えとんのか分からへんねんもん。

「あっ」

「あったんか?」

「ちゃう、思い出してん。シリウスや」

「は?あ、」

左斜め上を眺めていたら、本当にきらりと星は流れた。所詮人工物やたかが知れとるってなめとったんやけど、ちょっと感動した。本当に一瞬で消えてまうんやな。しみじみ、そんな事考えよったら急に肩が重なってびっくりした。そっち見たら名の頭があって、何やまた横来たんかいな、さすがに肩凝るわとか毒づいてみるけどどきどきしとる。不意打ちくらったから余計にやと思いたい。

「願い事は?」

「あんなん絶対三回も言えんやん」

「私言えるもん」

「よー言うわ」


そんな風に言うとまた黙りこくる。また、流れ星が見えた。今は同じ方向いとるから名も今のは見えたやろか。

「お前の願い事とかって何なん?」

「本物の流れ星見たい」

「そんくらい、いつでも俺が連れてったる」

「覚えとったらな。そん時」

どの時やねんって一応聞いてみるけど、こいつは何も言わんやろな。本物の星に願えば叶う確率上がるかもしれん。つーかこんなん言えるならはよ決着つけえっちゅう話や。分かっとるのに中々できんのは仕方ないと思う。いつか流星群とか見に行った時、三回、星消える前に願い事言えたら、名に言うてみようと思った。


次の流星群まで、間も無く




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