「俺が思うにあのボウヤはただちょっと恵まれていただけなんだ。偶然が偶然を呼んだだけなんだ。たまたま自分に美人な女子大生の従姉妹がいて、そしてその従姉妹のお姉さんが通う大学の近くにボウヤの家があって、だからそのお姉さんはボウヤの家に下宿してるだけ。ただそれだけ。ね、偶然だと思わない?」


「うん思う思う」



勝ち組の練習だって立海大の比ではないと前にこいつから聞いたはずなのに、はてさてあれはガセだったのか。よくもまあ辛い練習のあとでさぞかしお疲れなはずでしょうにお口は元気なこと。いつになったらこの遠吠えから私は解放されるのかと考えてもう30分も経ってしまった今、残った宿題は諦めようと決めた。握っていたペンを離して背伸びをすると少しだけ声が漏れて、電話越しの君に聞こえていたかなと恥ずかしくなった。



「俺は立海大のテニス部部長という輝かしい肩書きを持っているんだ。その名に恥じぬようテニスに明け暮れていたんだから、ちょっとくらい女子と触れ合う機会が少ないのは仕方ない。そんな事に興じている暇なんてなかったんだ。ボウヤはそれが俺よりちょっと多いだけ。まあ俺だってファンクラブの一つや二つはあるし?ボウヤにもひけをとらないんじゃないかな?自慢じゃないけど入院中だってナースのお姉さん達にちやほやもされたし?」


「そうだね幸村かっこいいよ」


「ちょっと、さっきからちゃんと聞いてるの」



かれこれ30分、何をこんなに幸村はむきになって止まぬ喋りを繰り広げているかというと、例の青学のボウヤにどちらが女子に恵まれているかを競うゲームに負けたらし「負けてないよ?」神の子は電話越しでも読心術が使えるらしい。


「ていうか幸村って前にファンクラブはあると迷惑とか言ってなかっ「ファンクラブあるでしょ?」…ウンアルヨー」



電話でやりとりをしていると、ああ、幸村も普通の中学3年だなって思った。モテたいとか考えるし女子に興味を持って年上に憧れたりする、所謂思春期。幸村は多分、青学のボウヤのファンクラブとか美人女子大生の従姉妹のお姉さんと一つ屋根の下とかそういう境遇を羨ましく思ったんだろう。男なら普通の反応なんだろうけど、私は腑に落ちない。幸村が年上のお姉さんに憧れるのは構わない。ファンクラブ欲しいとか思うのも別にいい。でも、3年もテニス部のマネージャーとして幸村の傍にいた私の存在がどうにも省かれていることに腹が立つ。ごめんなさいすいませんね美人なマネージャーじゃなくて。まあマネージャーなんて雑務を熟してきた汗くさい女子よりフローラルないい匂いの子のほうがいいよね、普通に考えて。



「……仮に俺がそのゲームに負けているとして、そこで俺はボウヤに一発逆転勝ちする方法思いついたんだけど」


「うん、」



どうして、幸村は、きつい練習の中時間を割いてほぼ毎晩、私にこうやって電話してくるんだろう。どうして、と思ったけれど、一般論から考えればそんなの答えは決まっている。けれどそれは同じく私の思い上がりとか自惚れとかが背中合わせに存在する事もあるから、一様に結論づける事はできない。だから、今私は君からの言葉を待ち続けている。



「ボウヤのように、自分は得に何とも思っていない不特定多数の女子に囲まれていることに勝つのは何だと思う?特定の人、という存在を持つ事だ。だから、俺が彼女という存在をつくることで俺はボウヤの一つ上へと昇華するんだ」


「……うん」


「だから、好きです付き合ってください」


「え、」


「え」


「………え、何練習?この空気何?」


「はっ?馬鹿じゃないの君。本番のつもりなんだけど俺は」


「は」





頭が真っ白になって止まってしまうかと思った。今まで何となく聞き流していた幸村の話だけど、今の言葉で完全に私の気はこちらに集中してしまった。冗談か、本気か。今返事をしてしまうとそれを見定める事ができないから、臆病な私は言わない。



「てゆうか、気づくでしょ普通。毎日毎日辛い合宿やってんのに、この俺が君のために時間割いて電話かけてるんだよ?」


「え、ちょ、待っ、あんた本物の幸村だよね?に、仁王とかじゃないよね?」


「しつこい。それとも何、俺じゃ嫌なの?」




電話の幸村は涼しい声だったけど少し早口でそうまくし立てた。今幸村の顔は見えないけど、私と同じで真っ赤だったりするのかなと思うと、何だかとても君が可愛いく思えてきて、大好きだって実感した。




「そんなの、好きに決まってんじゃん」


「そう、よかった」







勝機は我が手にあり!






「うん、でさ、ボウヤに俺の彼女って自慢するからエロい写真10枚くらい付けてメールして」

「うるさい女顔昆布頭さっさと寝ろよ」












10/0308


若干過ぎたけど幸村誕生日だしペアプリ出たし放課後出張版の幸村が可愛いすぎたんで勢いでやってしまった
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あっ、幸村誕生日おめでとう(^p^)







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