何時もの如く呼び出されたのは放課後の教室。告白だろうと簡単に予想が付く王道的シチュエーション。

けれど吐き出される言葉は暴力より痛くて鋭い棘。


「サイトー君の馬鹿っ!」

「っ!」

そんな事を思っていたら、本物の暴力が飛んできた。俺の右の頬は真っ赤だろう。何故女子はこんなにも平手打ちが好きなんだろうか、今月で5回目。

それに俺はいつからサイトーなんて名前になったのだろうか。俺の名前は確か柳田エージだ。

そんな事を考えているうちに女は教室から出て行った。学年でも可愛い部類に入る女子だった筈だ。そんな女子から放課後教室に来てくださいという内容の手紙を貰ったのは、彼女のいうサイトーだ。俺ではない。

そして俺をこの教室に呼び出したのもサイトーだ。伝言を頼まれてそのまま伝えた。

「ごめん、ムリ」

と。

メールで送られて来たこの伝言は、本来ならば語尾にダブリューが付いていた。それを静かに優しく伝えたにも関わらず平手打ちだ。思わず溜め息が出る。

なんで俺が、なんて言葉はもう何度のみ込んできた言葉か分からない。そんなのはサイトーに逆らえない俺が悪い。

今の高校に入学して3ヶ月後くらいに接触して来たのがサイトーだ。最初はちょっと下半身が緩いけど普通にいい先輩というのが印象だった。それから少しは仲良くしていたが、サイトーと同じ中学だったという奴から悪い噂を聞いて距離を置いた。

それから進級するまで接触していなかった先輩から、突然メールで呼び出された。場所は体育館裏。少し不安もあったが、サイトーの悪い噂というのを直接見たことは無かったから、時間通り体育館裏に行った。

そこからが悪夢の始まりだった。

体育館裏に着いた時サイトーはまだ居らず、待ちぼうけをくらっていた俺の背後から突然手が伸びてきた。その手は俺の口を塞ぎ、抵抗する俺を近くの用具倉庫への連れ込んだ。

そこからは痛みと恐怖ときもちいのとでぐちゃぐちゃになって、サイトーが俺の上で笑っていたことしか覚えていない。

いつの間にか撮られていた写真に写る己の痴態に吐き気がした。

「いうこときくならばらまかない。」

俺の耳元で囁いて下品に笑ったサイトーに、俺は小さく頷いた。

それからはストレス発散とばかりに暴力を振るわれ、遊びに行くと金を奪われ、どこぞの奴隷のような扱いを受けた。

きっと頭の悪いサイトーの携帯から、あの汚い画像は削除する事は簡単だ。それをしないのはサイトーへと抱く偏った感情が積もりすぎた所為だ。

何故本人が気づかないのか謎な程に、俺がサイトーへと向ける視線には熱がある。

俺の怒りというにも恨みというにも重すぎる感情を一心に受けるサイトーに同情する。可哀想に。早く気付いて俺という存在を廃棄していれば良かったのに、きっともう手遅れ。

もうずっとあの写真に写された行為の熱は冷めないままで。

彼はきっと軽んじている。



生殖という偉大な行為






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