どこでもdoor! | ナノ
うふふと満足げに笑う千里。いや、千里さん。
人型がとれるうえに、言語を理解し喋ることもできる使い魔。クラスメートの視線が痛い。だが、これだけは聞きたい。
「………何カップですか?」
「うふふ、知りたいの?」
是非とも!と全力で頷くと、後ろから朗人くんのドロップキックが飛んできた。結構マジで痛いんですが。
「てめぇに羞恥心はねーのかよ。」
「無いね。」
どや顔で返す。大丈夫だ使い魔ならセクシャルハラスメントにはならないだろう、きっと。うんきっと。というか副会長、笑いこらえてるのばればれなんだよ。
書記の方を見ると、唖然としたままの彼をルイが慰めるようにクークーと鳴いていた。俺の意識はそちらへと向く。なんだこの可愛すぎる生き物は。
案の定秋元も寄ってきて、ルイを確保。秋元の腕の中で狼狽えるルイを撫で回す。
未だに生徒達から注目を集めていた千里さんも、あらあらと言ってもとの姿に戻った。朗人くんが俺の代わりにすまねーなと謝っている。お前はホントに母親か。
「おい羽島、さっさと召喚行くぞ。」
あ、忘れてた。
俺の心を読んだのか呆れ顔になる朗人くんは、さっさと陣の方へ行ってしまった。慌てて追いかけるが、既に召喚を始めていた朗人くん。母親なら最後まで子供の面倒みろよ!なんて言葉は自分を子供だと認めている事に気が付き慌てて飲み込んだ。
魔法陣に魔力を吸い取られて息を吐く朗人くんの後ろ姿を眺める。不良らしくよれっとしたシャツから除くうなじから背中にかけてのラインがエロい。
秋元に言われて気が付いたのだが、朗人くんたらお母さんの癖にいろいろと現役だ。
なんて友人にすら不純な事を思う俺は、一般的な男子高校程度には生節操無しである。この際性別云々は今更だ。
開き直って、朗人くんを断じていやらしくなんて無いんだからね!という目で眺めていたら、魔法陣が強い光を放ち巨大な鏡へと変化した。
鏡の中心から少しずつ出てきたのは、何者かの頭部。
「どこのホラーだよ…………」
もしも今が夜であるとしたなら、間違いなく絶叫である。朗人くんも心なしか顔が引きつっている。
だがしかし、俺や周りの人々を包んでいた恐怖は一瞬で吹っ飛んだ。
何故なら鏡から出てきたのは推定年齢5才くらいの少年であった。
「しょ、ショタっ子だと!じゅるり………」
背後から聞こえた不吉な呪文は、神様の知識を持ってしても解読できなかった。
まだまだ続くであろう荒い鼻息の中の呪文をシャットアウトし、再び朗人くんと五才児に意識を向ける。
何を話しているかはこの距離では分からないが、契約の事だろうとは簡単に予想がつく。ただ朗人くんが驚いたり怯えたり笑ったりと、いろんな顔を覗かせているのは気に食わない。
朗人くんは俺専属の下僕なのに………。
心の中ではあるが、つい本音を吐露してしまった。
「おい、聞こえてんぞ………。」
後頭部への衝撃と共に聞こえてきたのは朗人くんの呆れた声だ。
溜め息をつく朗人くんの右手には五才児、不思議そうに俺を見つめている。なんかムカつくな。特に俺に隠れつつ盗撮をはたらいている秋元が。
とりあえずコミュニケーションをとろうと話しかける。
「名前は何てーの?」
幼児向けの優しい声が出来ただろうか。朗人くんが驚愕していたことから、成功であると分かった。
俺と初めて目を合わせる五才児。
「てめぇに教える名前なんてねーよ」
子供らしく無い馬鹿にした笑い方だ。
あれか、ペットは飼い主に似るように使い魔も主人に似るのか。五才児にして不良。もしかしたらお母さん要素もあるのかもしれないが。
まあとにかく、青筋ってまじで出るんだね。
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