どこでもdoor! | ナノ
秋元の使い魔になったのは、コスプレ一号であった。
また弄りがいがある奴が来たなとにやにやしていれば、また朗人くんが呆れ顔になっていた。
が、無視する。
そして良く考えたら秋元すごくないか?と思う。たしかミカエルとかいうらしいコスプレ一号は一応神様の右腕だと右肘だとかの筈だ。レベル的にはかなり上だろう。
今は鳩の姿をしているから、周りの生徒は若干秋元をバカにしているが。主に男子生徒だ。美形は妬まれるからなぁとか、思う。所詮は他人事である。
「羽島?どうした?」
考え込んでいたようで、朗人くんが声を掛けてくる。もう順番来るぞと言う朗人くん。どうしようお母さんに見えた。
確かにもうすぐ順番で、今は会長が召喚している真っ最中であった。黒い靄が少しずつ出てきている。
「ん?会長さんなんか変じゃないか?」
朗人くんが小声で俺に囁く。
会長をよくよく見てみると、確かに変だった。というか泣きそうだった。眉間にシワを寄せてごまかしてはいるが、あれは確かに泣きそうだ。あの会長が、だ。
「大丈夫か?」
心配そうな声の朗人くん。優しいなぁ、おい。と俺が朗人くんに感心している隙に、黒い靄と会長がいなくなった。
だんだん濃くなっていった靄で会長が見えなくなったと同時に靄と共に消えたのだ。
どんな形であれ、秋元や会長のように自分の空間に連れ込む使い魔は多いらしい。
俺達がハラハラする中、会長は黒くて小さな竜を連れて現れた。
種族はドラゴンで間違い無いらしく、名前はラウというらしい。
先程とは打って変わって幸せそうな会長に、一同唖然である。
代表して俺が一言。
「会長、嬉しそうですね?」
「……ああ、まあな。」
素直に頷いた会長は少し照れているようで、俺達は再び一同唖然である。
朗人くんはなんか気持ち悪ぃなとまで言っている。やっぱりどこか悪い奴である。
秋元がはすはすし始めて、ミカエルがその手の中で怯えていた。
一応殴るのは忘れない。まあ正気に戻って良かった。
だが、俺が殴ったと同時に秋元の力が少し弱まったのか、今がチャンスだとミカエルが脱走した。
まあ、そんな事は許さない。神様から貰った能力発動。
『ミカエル、秋元の肩にとまれ。』
これは、まあ言霊みたいなものらしい。大体の人で無いものは全てこの声が耳に入ると逆らえ無いそうだ。
大人しく秋元の肩に止まるミカエルは、可哀相な程震えていた。
「おい羽島、あんまり虐めるなよ」
「……………ちっ。」
朗人くんがミカエルをよしよしすると、安心したようにミカエルの震えが止まる。
せっかく面白い震え方だったのにと朗人くんを舌打ちして睨むと、やはり呆れ顔。
その顔飽きたとぼやいてさっさと魔法陣に向かう。何気にショックを受けたらしい朗人くんは固まっていた。
その反応も面白いので合格にしてやろう。
未だに固まっている朗人くんを放置して、書記と副会長のもとへ行く。
既に召喚を終えていた2人の使い魔は、ルイと千里であった。
ルイは書記様の使い魔で、会長の使い魔と同じ小さな竜だった。ただし色は深い青で、属性検査の時の書記様の石を思い出した。
千里は副会長の使い魔で、豹とかチーターとかに近い動物だった。
名付けたのは副会長だそうだ。どうりで日本名っぽい。契約方法が名付けることだったらしい。
「いい名前でしょう?」
それに綺麗でしょう?とにっこりと笑いながら千里を撫でる副会長は上機嫌だ。
「………泉のより…ルイの方が綺麗。」
それに反論するのは書記様だ。確かに綺麗さでいえばルイが上かもしれない。千里はどちらかというと可愛い方だ。
俺が無意識に頷くと、突然ボフンと音がした。
いつのまにか千里がとてもグラマーなお姉様になっていた。
「私の方が綺麗じゃない?」
艶やかな唇が動く。知っていたのか副会長はにっこりで、書記様はぽかんとしていた。
他の生徒達の注目も集まる中、俺は頷くしかなかった。
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