「あーきらくーん!」

無駄に胸を揺らす女と歩いていれば、久しい顔が声をかけてきた。

「やーん、あきら君久しぶりー!」

「おう。」

無駄にテンションの高いソイツ(男)に若干引きながらも手を上げて応える。

久しぶりに話でもというソイツに、ファーストフード店に連れ込まれる。一緒に居た女は無理やり帰した。

「いやぁ、ごめんね邪魔しちゃって」

悪びれる気も無いソイツに、別にと素っ気なく返せば巨乳好きなの?なんて言ってくるからテーブルの下の足を思いっきり蹴っておいた。



「あきら君、お家はうまくいってるの?」

呻いていたソイツは、ふと思い出したように嫌な事を聞いてくる。

「帰ってねぇよ。」

事実を返せば、ニヤニヤと笑う。

睨みつければ、俺の家に居候している奴からいろいろ聞いてるから知っていたと零した。

こいつは居候が総長をしているチームの幹部だ。

「ハヤが、君の弟のこと気にしてたからさぁ。」

弟の喜びそうなことで。

「………あいつには近づかない方がいいと言っておけ。」

「なんで?」

分かっているのか分かっていないのか微妙な声で聞き返してくる。

「あいつは、危ねぇ。」

「危ないってどんな風に?」

即答で返された。

「………奴の視界に入ると、かみ殺されるぞ。」

「つまり、ハヤはもうかみ殺されちゃうね。」

「おい。」

冗談めいた、それでも的を獲ている台詞を吐き出したソイツを睨みつければ、肩をすくめた。

「とにかくお前のとこの総長がかみ殺されたく無かったら、忠告しておけ。」

弟から逃げろって。

「うん、まあ、あきらくんがそういうなら。」

手遅れだと思うけどねと笑うソイツは楽しそうだった。

「あと、さ。危ないのは弟くんだけじゃないよね?」

確信しているのか、知っているのか、既に断定した物言いで尋ねてくる。

俺は無言で席を立つ。

「オニーサン、弟くんより危ない感じがしたよ?」

楽しそうに笑うソイツの台詞を背に聞きながら、店の外に出た。飯代は奴の奢りだ。

弟が狂気であるとすれば、兄貴は毒だ。

兄弟の中で、俺だけに流れていない2人の父親だという人の血がどんなものなのかは知らないが、俺はその血がとても恐ろしい。

けれど、俺はその血に惹かれる。

だからこそ兄貴が俺を視界に入れない現実に、唇を噛んだ







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