溜まり場、といっても知り合いが経営している喫茶店だが。到着して普通の客として訪れた時に知った裏口に回ろうと足を進める。
「ユキぃ、正面からいこー。」
トモダチ、ここでは副総長さまだったか。副総長さまが腕を掴む。
「……………。」
俺は無言で睨みつける。俺みたいな容貌の奴が正面から堂々と入り込めば、面倒な事になると決まっている。
こいつがそれを楽しみたいというのも分かっている。
だが、一応この店は知り合いの店だ。お世話になったりもしたから、来て早々に暴れたくはない。
「裏からはいっても一緒でしょー。」
「一緒じゃねェ。」
裏から入れば、注目される事は無いのでいきなり殴られることも無い。先に得意な口先を動かせれば、暴れる必要など無い。
分かっているのだろう副総長はご機嫌斜めになりながらも、腕を放した。
「………つまんねーのー。」
「これからだろォ。」
愉しいのは、と笑えば副総長はご機嫌を戻したようで、裏口の扉を開けてくれた。
単純な奴だ。
「はろーはろー。」
その単純な奴が挨拶の声をあげれば、2、3人から返事が返ってくる。
そして俺の存在に気づいた奴が、口を開く。
「副総長、また新しい玩具っスか?」
「…んー?そんなとこー。」
奴が適当に返答する。いや、確信犯か?。
また他の奴が、今度は俺に向かって口を開く。髪の色が赤なのはネタか。
「副総長趣味わりぃーな。」
からかうような声色は不快だが、副総長から聞いていた中々強い赤髪のナンバー3だと気づいたので敬意を表して殴らないでおいた。
副総長が無駄に声をかけてくる連中を適当にあしらう。といっても、裏の方にいるのは幹部連中とかの一部だけなので、いきなり殴りかかってくるような奴も居なかった。
表の方から裏口のある奥の方の部屋は区切られている為、幹部連中しか居ないのだ。だが、念のため表と奥を繋ぐ扉の鍵を閉める。
そして五月蝿い連中は副総長に任せて、さてどうするかと呟く。
まずは、闇討ちしている連中を見つけないとなァと思いながら。ソファーに座る赤髪の横に腰掛けて、ニヤリと笑いかけた。