俺の両親は、八年前に死んだ。元々、仲良くもなかった親だ。涙するなんてことも無ければ、悲しいなんて感情もわくことは無かった。

それから俺は、親戚だという男に育てられた。その親代わりも二年前に死んだ。やはり、涙は出なかった。

それからは、その親代わりの遺言のもとその親友の鈴木家に居候という形で住み着いている。

少し変わった家族構成で、3人の兄弟と父親の4人暮らし。3人兄弟のうち2人、長男と三男が父親と血が繋がっておらず、実の父親は俺の親代わりなのだそうだ。


俺が鈴木家に居候を始めた頃は、非行に走り出したばかりで、同級生で尚且つ同じ高校の地味で根暗な印象を受ける三男をパシリにしたりもした。

三男のことを可愛がっているらしい長男には睨まれたりもした。けれど、奴の目には俺は写っていないようだったし気にも留めなかった。

それどころが、長男の目には三男のこともはっきりとは写っていないようだった。誰も写さない長男の目がとてつもなく気持ち悪かった。


そんな長男に対する反抗も込めて、鈴木家に居候してから一年たった頃に三男。ユキに暴力を振るうようになった。

その頃、ユキを根暗に見せる前髪の下に整った顔があるのは気づいていた。親代わりだった男にそっくりな、雄臭い癖に甘くて、それでもやっぱり男らしい顔。男前と呼ぶに相応しい顔。

その顔が歪むのが見たくて、衣服が破れるまで殴りつけ、蹴りつける。

意外に鍛えられて腹筋も薄く割れている、がっちりした体に痕をつけていく。これだけ鍛えていれば、反撃ぐらい出来るだろうに何もしないユキ。

その顔が痛みに歪む度、俺は満たされる。


そして俺が暴力をふるっている最中に、たまにユキが見せる、欲にまみれた男の顔もスキだ。


たまらない。ユキが俺に見せつけてくる俺への執着がたまらない。いつの間にか中毒死してしまいそうな程に、俺はユキに溺れる。


ユキが俺に愛の言葉を囁くのはいつだろうか。自分は暴力しか与えない癖に、俺はユキに何かを望む。


でも俺は間違ってねぇよな?

だってお前は俺に望まれる事だけが幸せなんだろ?










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